歯列矯正で保険適用になる症例とは?民間保険・医療費控除の扱いとあわせて解説
「歯列矯正は保険適用外と聞いたけど、例外はないの?」
「歯の矯正を考えているけれど、高額になるから医療費控除を使いたい」
こんな疑問がありませんか?
原則として、歯列矯正、いわゆる歯の矯正治療は公的医療保険の適用外です。
ただし一部の治療では、公的医療保険が適用され、また医療費控除や民間の医療保険の給付を受けられる場合があります。
この記事では歯列矯正を考えている人向けに、保険適用や医療費控除の扱いをまとめました。矯正治療をするか悩んでいる人は、参考にしてみてください。
歯の治療に対する公的医療保険・民間医療保険・医療費控除の扱い
歯並びを整える歯列矯正は、基本的に公的医療保険や民間の医療保険・医療費控除の対象外です。
しかし、歯列矯正のすべてが対象外になるわけではありません。
<歯列矯正に対する各種保険・医療費控除の取り扱い>
歯の状態が「矯正治療が必要」と認められる場合には、各種保険や医療費控除が対象になります。それぞれの取り扱いを以下にまとめましたのでご覧ください。
公的医療保険 | 民間医療保険※1 | 医療費控除 | |
---|---|---|---|
歯並びをよくするための歯列矯正 例:審美的な理由で行う、大人の歯列矯正 | × | × | × |
歯列矯正が必要と認められる、治療のための歯列矯正 例:発育段階にある子どもの歯列矯正 | × | × | 〇 |
先天的な疾病を原因に生じるかみ合わせの異常など、公的医療保険が適用になる一部の症例 | 〇 | ▲ | 〇 |
※1 加入している保険会社・医療保険により異なる
上記のとおり、ただ歯並びをよくする歯列矯正は審美歯科の扱いになり、治療としては扱われません。よって公的医療保険・民間の医療保険・医療費控除はすべて対象外です。
ただし、発育段階の子どもでかみ合わせが悪いなど、歯列矯正が必要と認められる場合は医療費控除の対象となる可能性があります。
また症例によっては、公的医療保険が適用となることもあります。
詳しい症例については、次項で解説していきましょう。
出所:「No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm
歯列矯正で保険適用になる3つの症例
日本矯正歯科学会によると、歯列矯正で公的医療保険が適用になる症例は以下の3つです。
①「厚生労働大臣が定める疾患」に起因した、咬合異常に対する矯正歯科治療
②前歯3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)に対する矯正歯科治療
③顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・手術後の矯正歯科治療
引用元:「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは」(日本矯正歯科学会)https://www.jos.gr.jp/facility
①は、生まれながらの病気が原因でかみ合わせに異常がある状態。②は、大人になっても前歯3本以上の永久歯が生えてこない病気が原因で、かみ合わせに異常がある状態です。
そして③は、顎の骨の大きさや形に著しく異常がみられる状態を指しています。
つまり先天的な疾病や、生まれ持った顎の骨が原因で歯列矯正をする場合は公的医療保険の対象。それ以外の「歯並びがちょっとガタガタしている」程度では、保険適用は認められません。
自身の歯列矯正が保険適用になるか気になる場合は、一度歯科医師に相談してみるといいでしょう。なお、上記の保険適用となる矯正歯科治療を行えるのは、厚生労働大臣が定める施設基準に適合している医療機関のみとなっています。
親知らず(埋伏歯)の抜歯手術は保険適用になる?
一般的な通院治療による歯列矯正は、そのほとんどが公的医療保険の対象外であることがわかりました。
ところが、歯列矯正の過程で行うことが多い親知らずの抜歯手術は、公的医療保険・医療費控除に加えて、民間の医療保険の対象になることがあります。
元々、親知らずの抜歯手術は歯列矯正にかかわらず公的医療保険・医療費控除の対象で、民間の医療保険は対象外です。
しかし、加入している保険や親知らずの抜歯手術によっては、民間の医療保険の給付が受けられるケースがあります。
以下、親知らずの抜歯手術についての各種保険の取り扱いをまとめました。
<親知らずの抜歯手術と各種保険>
・基本的な抜歯のみの手術:公的医療保険・医療費控除の対象だが、民間の医療保険は対象外
・以下の抜歯手術:民間の医療保険の給付が受け取れる可能性がある
ー 親知らずが歯茎の中に埋没している「埋伏歯」である
ー かみ合わせが悪く歯列矯正をしていて、医師により「埋伏歯」を抜く必要があると言われている
ー 「埋伏歯」を複数本抜くため、入院して外科手術を受ける場合
筆者自身も歯の矯正治療を希望して矯正歯科に行ったとき、親知らず4本すべてが完全に埋没していると言われました。そして「治療の過程で抜歯が必要だが、4本を同時に抜く場合は全身麻酔下での外科手術となるため、1泊2日の入院が必要」とも言われたのです。
このような入院を伴う手術の場合、民間の医療保険でも、加入している保険によっては手術給付金や入院給付金がおりる可能性があります。
もちろん「埋伏歯」とひと口に言っても、実際の生え方はいろいろです。生え方によっても治療方法は変わりますし、1本ずつ抜く人もいるでしょう。抜歯手術やその手術に伴う入院が給付対象になるかどうかは、加入している医療保険により異なりますので「ご契約のしおり・約款」で確認するか、保険会社に問い合わせてみてください。
まとめ
「歯並びがちょっとガタガタしている」程度の歯列矯正は、治療とみなされないため公的医療保険や民間医療保険の適用外です。医療費控除も、その矯正が必要と認められる程度でなければ対象となりません。
各種保険や医療費控除を使える可能性があるのは、以下の症例で歯列矯正が必要なケースです。
・先天的な病気が原因でかみ合わせに異常がある
・生まれつき前歯3本以上の永久歯が生えてこない病気が原因で、かみ合わせに異常がある
・顎の骨の大きさや形に著しく異常がみられる
上記に該当しない歯列矯正でも、埋没している親知らずを抜く手術は各種保険や医療費控除の対象になる可能性があります。特に、複数本の親知らずの抜歯手術は入院することが多いため、民間医療保険の手術給付金や入院給付金の対象になるかもしれません。
ただし公的医療保険も民間の医療保険も医療費控除も、自己判断では対象かどうかわかりません。
大切なのは、専門医に自身の症例を正しく確認してもらうこと。
そのうえで保険会社に「この症例の手術・入院は給付金が支払われれるか」を、税務署では「医療費控除の対象になるかどうか」を尋ねましょう。
安易に自己判断せず、まずは専門家に尋ねることが大切です。
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