あなたにとって最低限の保険はいくら?保険の見直しする前に必ず見てほしい、お金の知識

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あなたにとって最低限の保険はいくら?保険の見直しする前に必ず見てほしい、お金の知識

「日本は社会保障が充実しているから、保険は最低限でいい」よく耳にする言葉です。しかし同時に、「最低限ってなんだろう」と疑問に思うことはないでしょうか。
 
当然ながら、「最低限」の中身は人によって違います。ライフスタイルも働き方もすべてが多様化している現代で、どの家庭にも等しく当てはまる保険のパターンなどありません
 
そこで今回は、自分にとって必要な保険の考え方を解説します。
「我が家に最低限必要な保険の考え方を知りたい」人は、判断の参考にしてください。

「最低限」は人によって違うためパターン化できない


「保険は最低限でいい」とは言うものの、人によって「最低限」の中身は異なるため注意が必要です。
年齢、働き方、家族構成、資産の状況や価値観、社会的立場は人それぞれ違います。また、保険商品そのものも、社会の状況にあわせて変わってきています。ライフスタイルも保険も含めてすべてが多様化している現代では、何かを固定したパターンに当てはめて断言することはできません。

したがって、以下のような意見は個別の状況を考慮していないため注意が必要です。

「高額療養費制度があるから医療保険は最低限でいい」
「生命保険は掛け捨てで最低限あればいい」
これらの言説に対する注意点を見ていきましょう。

「高額療養費制度があるから」の注意点


「日本は公的医療保険制度が充実している。高額な医療費がかかったとしても高額療養費制度があるから、医療保険は最低限でいい」
よく見る意見です。
たしかに日本の公的医療保険制度は優れていますが、高額療養費制度には以下の落とし穴があります。

・月をまたいだ医療費は対象外
・保険外診療や差額ベッド代、食事代は対象外
・仕事を休んで減少する収入や家事・育児をカバーする家事代行費などは家計の中で対処しなければならない
 
特に気をつけたいポイントが、「月またぎ」の医療費です。
高額療養費制度は月収が30万円程度の会社員であれば月の自己負担額が8万円程度になる制度ですが、この自己負担額は月ごとの上限額です。例えば、治療が9月末日から10月上旬までまたがる場合は、それぞれの月ごとの自己負担額がかかります。実際に治療に要した期間が1か月以内であっても、月をまたぐと自己負担が増えてしまうので気をつけましょう。
 
治療が月をまたいだ場合や個室を利用した場合には、想定以上の医療費がかかるのです。
さらに子育て家庭で子どもを施設に預けたり、ベビーシッターや家事代行を利用したりすれば、その費用も別途用意しなければなりません。高額療養費制度は万能ではなく、個別の状況によって必要な医療費・生活費は異なるため、「最低限必要な保険」の金額も人それぞれ違います。

「生命保険は掛け捨てで最低限あればいい」の注意点

「生命保険の貯蓄型は貯蓄効率が悪いから、掛け捨て型を最低限かければいい」こうした意見もよく見聞きします。
 
しかし生命保険は貯蓄ではなく保険です。
それぞれ別の性質である商品を同列に並べ、一方の商品を貯蓄効率が悪いと評価することには無理があるのではないでしょうか。たしかに、貯蓄型保険は貯蓄面だけを見ると効率が悪いかもしれません。しかし、貯蓄と保険がセットになっており「強制的に貯蓄できる」点にメリットを感じる人もいるでしょう。
 
保険を評価するとき、ある一つの特徴だけを取り上げて必要・不要と判断するのは危険です。各家庭の事情や価値観にとって、使いやすく、続けやすい保険を選ぶほうが大切ではないでしょうか。
 
また、「掛け捨て保険を最低限用意すればいい」という意見の最低限もあいまいです。たとえば「葬式代さえあればいい」と言う人がいますが、その人の社会的な立場や世間体、遺族の意向も考慮しなければ葬式の規模は決められません。本人は簡素な葬式を希望していても、弔いの場を設けるのは遺族です。周囲の状況によっては、小規模な葬式ではすまないケースもあるでしょう。
 
このように、個々の事情や価値観によって合う保険も、最低限必要な保険金額も違います。

高額費療養制度の例(標準報酬月額28~50万円の方の場合)

保険を考えるときに確認したい公的保障・企業保障・貯蓄

自分にとって必要な保険は、どう考えればよいのでしょうか。
保険を考えるときに確認したいのが、公的保障・企業保障・貯蓄の状況です。

<確認する順番>
1.公的保障:公的年金、公的医療保険等で保障される内容を確認
2.企業保障:勤務先の健康保険による独自給付や、企業貯蓄制度、退職金の状況を確認
3.貯蓄:大きなリスク発生時に支払える貯蓄額を確認
 
保険の本質は、自分の資産では対応しきれない大きなリスクに備えるものです。たとえば火災、自動車事故、働き盛りの大黒柱の死や長期の闘病。起きる確率は低いものの、万一発生したら貯蓄だけで対処しきれないと思われるものがリスクです。
 
もちろん、大きなリスクに対して国はある程度の公的保障を用意しています。若くして亡くなった世帯主の遺族には遺族年金がありますし、一定額以上の医療費負担を抑える高額療養費制度もあります。受けられる保障内容は人それぞれ違うため、自分が利用できる公的保障の内容を確認しておきましょう。
 



公的保障を確認できたら、次は企業保障の確認です。
企業によっては独自の健康保険組合に加入していて付加給付があったり、企業内の貯蓄制度があったりします。退職金も企業や勤務状況によって金額が異なるため、自分が受けられる保障をよく確認しておかなければなりません。
 
最後に、想定されるリスクに対してこれらの保障と貯蓄で対処できるのかを確認します。大きな事故が発生しても、十分な貯蓄があれば保険は不要でしょう。一方で貯蓄が少なく対処が難しい家庭や、小さい子どもがいて万一の際に必要な金額が大きい家庭では、各家庭の不足額に応じた保険が必要です。

まとめ

保険を考えるうえで大切なのは、「保険は最低限これさえあればいい」という言葉に惑わされないことです。
 
ライフスタイルも働き方も多様化している現代では、何かをパターンにはめて考えること自体無理があります。安易に保険の固定パターンを求めても、結局家族に最適な保障の形はわかりません。
 
面倒くさくても、「自分の人生や家族に必要な保険とは何か?」を各家庭で考えることが何より大切です。
 
考えていく中でどうしてもわからない点がある場合や、必要な保障に適した保険商品のアドバイスがほしい場合には、保険会社や代理店などの保険のプロに相談する、またはお金の専門家であるファイナンシャル・プランナー(FP)に聞くといいでしょう。
まずは各家庭で保障や貯蓄の状況を整理し、個々の事情をよく確認すること。そのうえで専門家のアドバイスを受け、最終的な判断はご自身で行うようにしてください。


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