出産に保険は使える?妊娠~出産でかかるお金ともらえるお金

  • 更新日:

    (公開日:2020/09/11)

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出産に保険は使える?妊娠~出産でかかるお金ともらえるお金

「妊娠・出産は病気ではないから健康保険は使えない。そのため全額自己負担だ!」
と聞いたことがあるかもしれません。

確かにその通りなのですが、それは妊婦健診代と自然分娩代に限ります。

実は出産するまでに病院にかかることは少なくなく、その内容によっては保険適用となるのです。
また公的な助成、さらには民間の医療保険でカバーできるものまであります。

楽しみな一方で不安もある出産。
この記事では「お金」に関する疑問を解決することで、あなたのマタニティライフを応援します!

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妊娠中に使える保険ともらえるお金

まずは妊娠にまつわる主なお金についてです。

かかる費用保険適用異常妊娠での外来・入院治療費、妊娠以外の病気やケガの治療費
保険適用外妊婦健診代、入院時のベッド代や食事代
もらえるお金公的補助妊婦健診受診票、傷病手当(公務員や会社員)、高額療養費、医療費控除
民間医療保険の給付入院給付金、手術給付金など


妊婦健診代は保険適用外だが公的な助成がある

妊娠中に病院に行くとなると、一番想像しやすいのが妊婦健診です。
妊娠してから12週が経過すると始まる健診で、母体や胎児の健康を確認するために行われます。妊婦健診代は健康保険の適用外です。

一般的に妊婦健診の回数は

妊娠23週(6か月)まで4週に1回
妊娠35週(9か月)まで2週に1回
妊娠36週以降(10か月)毎週


が目安とされています。経過に不安があったり、多胎(たたい:双子や三つ子などのこと)であったりする場合は、これよりも回数が多くなることもあります。

妊婦健診の費用は保険適用外ですが、すべて自己負担というわけではなく自治体からの補助があります。「妊婦健康診査助成券(自治体により名称が異なります)」が配布されるので、会計時にこの助成券を使用することで、負担が軽減されるのです。

ただし助成券の枚数は、最大を14枚として自治体により差があります。さらに保険適用外の検診費用は病院によって異なるため、助成券を使っても自己負担が発生することもあります。

そのため妊婦健診代の補助はあるとはいえ、全額を助成してもらえるとは言えません。

入院した場合には公的な助成がある

妊娠中に病院にかかるのは妊婦健診だけではありません。治療が必要となり入院する可能性も少なからずあるのです。もし入院してしまった場合、その入院治療費は保険適用となります。

入院する例としては妊娠中のトラブル、具体的には流産や切迫流産、子宮外妊娠、切迫早産、妊娠高血圧症などがあげられます。
厚生労働省が発表した「平成29(2017)年 患者調査」では、妊娠にかかる病気で入院した人の推計は5,000人以上にのぼります。

これらの入院治療費は保険の適用対象なので、原則3割負担で受療できます。
ただし入院費の中でも保険の対象外となる費用があるので注意しましょう。妊娠の有無に関わらず、食事代や個室を利用した際の差額ベッド代などは保険適用外です。
さらに入院中に妊婦健診を受けた場合、健診部分については保険が適用されず、助成券を使用することになります。

また入院には至らなくても、自宅で療養せざるを得ないときがあります。「重度の悪阻(おそ:つわりのこと)がある」「多胎のため安静を指示された」「軽度の切迫流産の兆候がある」ときなどです。
会社員や公務員の場合、これらの妊娠トラブルで仕事を休まざるを得ないときに「連続する3日を含む4日以上で、妊娠トラブルのために仕事に就けないこと」など所定の条件にあてはまれば、加入している健康保険から傷病手当金が支給されます。

終わりが見えない妊娠トラブルはただでさえ不安ですが、その間に有給休暇がなくなったらどうしようと悩んでしまうともっと不安になりますよね。まずは傷病手当金の制度が使えるかを確認しましょう。

入院した場合は民間医療保険の給付対象になる

民間の医療保険に加入していた場合、異常妊娠など給付金支払の要件を満たしていれば入院給付金をもらえる可能性があります。入院1日につきいくらか、もしくは1回につきいくらもらえるかなどを、確認することが大切です。

もし女性向けの保険や女性特約がついている保険に加入していた場合、「入院給付金が上乗せされる」など、さらに手厚い保障が受けられます。

出産で使える保険ともらえるお金



次に出産にまつわるお金について見ていきましょう。

かかる費用保険適用異常分娩代、産後のトラブルにかかる入院費や治療費
保険適用外自然分娩代、入院時の食事代や差額ベッド代
もらえるお金公的補助出産育児一時金、出産手当金(公務員や会社員)、高額療養費、医療費控除
民間医療保険の給付入院給付金、手術給付金など


自然分娩でも異常分娩でももらえる出産育児一時金

自然分娩か帝王切開か、また総合病院か個人病院かなど、分娩方法や分娩場所に関わらずに受け取れるのが、出産育児一時金です。

1児につき42万円( 在胎週数が22週に達しておらず産科医療補償制度加算対象ではない場合や産科医療補償制度未加入の医療機関の場合40万4千円)が支給されます。

出産したあなたに振り込まれるのではなく、基本的には加入している健康保険から医療機関に対して直接支払われます。そのため高額な出産費を一時的にたてかえる必要はありません。
もし出産費が出産育児一時金よりも少なかった場合は、加入している健康保険に請求することにより、差額を受け取ることができます。

自然分娩か異常分娩かで変わる助成金

基本的に出産費用には健康保険が使えず、民間の医療保険も給付の対象外です。
しかし異常分娩の場合は両方の対象となることがほとんどです。

では異常分娩とはどのようなことをいうのでしょうか。

  • 帝王切開での分娩
  • 吸引分娩
  • 鉗子分娩


などがあります。

これらの分娩の場合、出産費用は保険適用となり、また民間の医療保険でも入院給付金や手術給付金が支給される可能性があります。

最近では病院での出産のうち25%強が帝王切開となっているため、異常分娩の中でも特に帝王切開は身近な珍しくない出産方法だといえるでしょう。

妊娠での入院と同様、異常分娩であっても、入院中の食事代や個室の差額ベッド代などは保険適用外です。

その他の公的助成

会社員や公務員の場合は、健康保険から出産手当金が支給されます。

支払われる要件健康保険の被保険者が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合
支給される期間出産の日もしくは出産予定日を基準として42日前(多胎の場合は98日前)から、出産の翌日以後56日目までの、仕事を休んだ日数分
支給される1日あたりの金額標準報酬月額÷30日×2/3
※直近12カ月間の標準報酬月額を平均した額です。具体的な金額や加入期間が12か月に満たない場合の金額などは、勤め先で確認することができます。


ただし、自営業などの国民健康保険加入者や、配偶者の健康保険の扶養に入っている人は対象外です。

また妊娠出産に限らず、医療費が一定額以上かかった場合には確定申告をすることで所得税を軽減できます。
具体的には家族全員の1月~12月に支払った医療費合計が10万円(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額)を超えた場合です。

これらの制度の要件に該当する場合は、金銭的な負担を軽減できます。

妊娠~出産の保険に関わる高額療養費


妊娠と出産それぞれの「かかる費用」「もらえるお金」について整理してきましたが、妊娠~出産を通して忘れてはならない公的助成があります。
それが高額療養費制度です。

高額療養費制度とは

1か月(1日から末日まで)に支払った医療費が、上限額を超えた場合に返還される制度を、高額療養費制度といいます。
この医療費とは保険が適用されるものに限定されるため、差額ベッド代や妊婦健診代などは対象外です。

参考までに、69歳以下の方の限度額を下記にまとめました。

標準報酬月額、報酬月額1か月の限度額多数回該当の場合
A健保:標準報酬月額83万円以上
国保:旧ただし書き所得901万円超
252,600円+(総医療費-842,000円)×1%140,100円
B健保:標準報酬月額が53万円~79万円
国保:旧ただし書き所得600万~901万円
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%93,000円
C健保:標準報酬月額が28万円~50万円
国保:旧ただし書き所得210万~600万円
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%44,400円
D健保:標準報酬月額が26万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円以下
57,600円44,400円
E被保険者が市区町村民税の非課税者等35,400円24,600円


細かい数字になるとややこしく感じるので、例えば表のCに該当する方なら「医療費が月に8万円を超えた場合は、高額療養費の適用になるかも?」と思い出せるよう、頭に置いておきましょう。
また表の一番右側、「多数回該当の場合」を見てください。これは12か月以内に3回上限額に達した場合に、4回目から適用される上限額です。

妊娠中に複数月入院すると、4回以上上限額に達する可能性もあります。その場合は4回目から上限額が下がるため、それまでよりも少ない負担額であっても適用を受けられるかもしれません。「今月は6万円だったから該当していないな」と誤解しないよう注意しましょう。

高額療養費の申請方法

基本的には対象となる領収書原本と申請書を、加入している健康保険の窓口に提出します。印鑑や振込先口座がわかるもの(通帳など)のほかマイナンバーカードが必要な場合もあるので、事前に電話などで申請に必要なものを確認しておくと安心です。
健康保険によっては「支給対象になっているので申請してください」と通知が送られてきたり、一度申請すれば自動的に口座に振り込まれたりします。会社員や公務員の方は職場に窓口がある場合もあります。国保の場合は自治体の窓口で申請しましょう。
受診してからおよそ3~4か月後に自己負担限度額を超えて支払った金額が支給されます。

ただし

  • 高額な医療費を立て替えるのは、一時的であっても負担になる
  • 妊娠期間は約10か月に及ぶので、複数月に該当した場合その都度申請に行かなければいけない
  • 妊娠トラブルのあと退院できても、自宅安静を命じられて申請に行けないかもしれない
  • 産休中で職場に行きづらい


などのことをデメリットに感じる可能性もあります。

これらの対策として、事前に限度額適用認定証を入手するという方法があります。
限度額適用認定証は、保険証と一緒に病院窓口に提示することで、その時点で自己負担限度額までの請求額しか払わなくてよくなるものです。

有効期限内であれば繰り返し使えるので、事前に申請しておくと安心です。

ここまで妊娠~出産における医療費と保険の関係についてみてきました。「保険はきかず全部自己負担だ」と思っていた方も、そうではないとわかったと思います。
一方で、妊婦健診と分娩代以外にも費用がかかるということ自体、あまり知らなかった方もいるのではないでしょうか。
そんな妊娠トラブルや異常分娩に役立つ保険について最後にみていきます。

出産にむけて保険に加入するベストなタイミング


異常妊娠や異常分娩にかかる費用、さらには入院時の健康保険が使えない費用については、民間の医療保険が役に立ちます。とくに差額ベッド代は1日あたり平均で6,188円かかり、負担も大きいです。20代~40代の女性にとっては身近な出産、できれば保険で備えておくと安心ですね。
ただし妊娠してから保険加入を検討する場合は注意が必要です。

妊娠中に保険に加入すると、「子宮部位に関わる疾患」や「出産に関わる疾病」の不担保という条件がつき、妊娠や出産にかかる治療は保障の対象外になってしまいます。

このような条件つきであれば、妊娠期間中どのタイミングでも申し込める商品が増えていますが、一部の商品では妊娠27週を過ぎると加入自体ができないというタイプもあります。

つまり、保険に加入するのに一番いいタイミングは妊娠前、妊活前といえるのです。

ただ、「妊娠中に保険の重要さに気づいた」場合でも、加入を検討することはできます。今回の妊娠が保障の対象外であっても、妊娠出産を期に体の免疫力が下がり、健康に不安を感じる可能性もあるからです。その時に支えてくれる保険があると心強いですよね。
なお、がん保険や死亡保険、介護保険は、医療保険のような条件はつきません。妊娠を機に保険について興味をもった場合は、この機会にさまざまな商品を比較してみてはいかがでしょうか。

まとめ



妊娠~出産でかかるお金ともらえるお金についてご紹介しました。

必ずしも全額自己負担とは言えません。公的な助成や民間医療保険の請求漏れがないように、対象になる項目はその都度確認しましょう。

この記事が、出産に対する不安を少しでも軽減できるものになればうれしいです。


お金に対する不安はできるだけ少なくして、長いようで短いマタニティライフを楽しく過ごしてくださいね。

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この記事を書いた人
太田太田

保険代理店のニッセンライフの一員として保険比較総合サイト「WillNavi」の運営に携わって2年。母親目線で保険のことをわかりやすくお伝えいたします。

出典


「平成29年(2017年)患者調査」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/index.html

「平成29年(2017年)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/17/

「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf

「第401回中央社会保険医療協議会・主な選定療養に係る報告状況」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000400350.pdf

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