高額介護合算療養費とは?親の介護で知っておくべき制度を解説

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高額介護合算療養費とは?親の介護で知っておくべき制度を解説

親が遠方に住んでいる場合、将来の介護のことを考えると心配ですよね。
実家まで通って介護するか、施設に入ってもらうか…介護方法や費用のことまで、さまざまな不安が出てくると思います。

介護について考えるときは、

「介護保険制度の概要を理解すること」
「高額介護合算療養費について知っておくこと」
「平均的に、介護にはどのくらいの費用がかかるのか知っておくこと」

が大切です。

この記事では、親の介護について考えるときに知っておくべき情報を解説していきます。

それでは、詳しい内容を見ていきましょう。

知っておいてほしい介護保険の基本



まずは、公的な介護保険の概要について解説します。
いざというときに、焦らず必要な手続きがとれるよう、最低限の制度内容をおさえておきましょう。

公的介護保険とはどんな制度?

介護保険は、市区町村が運営している公的保険のひとつ。
40歳になると、健康保険料と一緒に介護保険料をおさめます。
そして介護が必要になったとき、原則1割の自己負担で介護サービスが受けられるのです。

ポイントは、「現物給付」である点。介護状態に応じて現金が給付されるわけではなく、サービスを受けることや介護用品を購入することになったとき、1割の費用負担で済むというものです。一旦立て替える必要もありません。

介護保険のサービス内容

介護保険の補助対象となるサービスにはさまざまな種類がありますが、大きくわけると4種類あります。

  • 居宅介護サービス
  • 施設介護サービス
  • 介護用品購入費補助
  • リフォーム補助


居宅介護サービスは、自宅での生活が中心となった介護サービスです。
自宅で介護を受けられる「ホームヘルパー」や「訪問入浴」や、日中だけ介護施設に通うタイプの「デイサービス」や「デイケア(通所リハビリ)」などがあります。

施設介護サービスでは、介護を受ける人が施設に寝泊まりしながら、24時間の介護サービスが受けられます。
居住費や食費など全額自己負担となる費用も発生するため、一般的には居宅サービスより費用がかかることを理解しておきましょう。
施設介護サービスには、市区町村が運営する施設があります。
要介護3以上から入所できる「特別養護老人ホーム」や、要介護1以上の方がリハビリ目的で入所する「介護老人保健施設」などです。
また、民間の介護施設でも介護保険が利用できます。
基本的には市区町村運営施設に比べ高額にはなりますが、各施設でサービス内容に特色があり、幅広い選択肢があります。

介護保険の対象になるのは?


介護保険の支給を受けるには、65歳以上かつ「要介護認定」を受けること、もしくは、65歳未満であれば特定の疾病に該当していることが条件です。

「要介護認定」では、要支援1~2段階と要介護1~5段階の合計7段階の状態が定められており、どの段階に認定されたかによって、サービスの支給限度額が異なってきます。
要介護認定の基準は、以下の表を参考にしてください。

要介護認定等基準時間の分類
直接生活介助入浴、排せつ、食事等の介護
間接生活介助洗濯、掃除等の家事援助等
問題行動関連行為徘徊に対する探索、不潔な行為に対する後始末等
機能訓練関連行為歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練
医療関連行為輸液の管理、じょくそうの処置等の診療の補助
要介護認定等基準時間の分類
支給限度額(円)
要支援1上記5分野の要介護認定等基準時間が25分以上32分未満
またはこれに相当する状態
50,320
要支援2上記5分野の要介護認定等基準時間が32分以上50分未満
またはこれに相当する状態のうち、要介護状態にある者
105,310
要介護1上記5分野の要介護認定等基準時間が32分以上50分未満
またはこれに相当する状態のうち、要介護状態にある者
167,650
要介護2上記5分野の要介護認定等基準時間が50分以上70分未満
またはこれに相当する状態
197,050
要介護3上記5分野の要介護認定等基準時間が70分以上90分未満
またはこれに相当する状態
280,480
要介護4上記5分野の要介護認定等基準時間が90分以上110分未満
またはこれに相当する状態
309,380
要介護5上記5分野の要介護認定等基準時間が110分以上
またはこれに相当する状態
362,170


要介護認定を受けるには、市区町村または地域包括支援センターで要介護の申請をします。
書類と訪問による認定チェックがあり、訪問では次のような内容が聴取されます。

  • 歩行や視力などの、身体機能について
  • 食事や排泄・入浴などの生活機能について
  • 認知症の可能性について
  • 直近に受けた医療についての情報
  • 近所づきあいや人間関係
  • お金の管理について


普段から親と連絡を取り合い、上記の質問に答えられるように準備しておくと安心ですよ。

要介護別に定められた限度額を超えた分は、1割負担でなく全額自己負担となります。
本来高額介護サービスという制度(医療保険制度の高額療養費に似た制度)により、月々の自己負担額には所得による限度額があります。介護費用がかさんでも、一定の金額までの支払いですむのです。
しかし上記の支給限度額を超えた費用には適用されないので注意しましょう。

ただしあとでお伝えする高額介護合算療養費を使うことで、負担を減らすことが可能です。

高額介護合算療養費制度について知っておこう

高額介護合算療養費制度とは、1年間での世帯内の介護・医療費の合算が規定の上限額を超えた場合に、超過分を払い戻してもらえる制度のことです。
介護費用が高額になれば介護保険で、医療費が高額になれば医療保険で、それぞれ上限額の超えた分を払い戻してもらった方もいると思います。実はそんな方でも、1年分を合算することでさらに払い戻される可能性があるのです。
また夫が介護サービスを受け、妻が高額な医療を受けた場合でも世帯で合算できる点が魅力です。

世帯の医療費・介護費は、年を重ねるごとに増加傾向にあります。申請漏れはもったいないので、対象となったときに利用できるようにしておきましょう。

高額介護合算療養費制度の対象となるのは

高額介護合算療養費制度を受けられるのは、「8月から翌7月の1年間で、介護サービス費と医療費の自己負担が、負担限度額を超えた利用者」です。

注意点としては、「世帯内で合算できるのは、同じ医療保険制度の中だけ」という点。
たとえば、夫が「後期高齢者医療制度の被保険者」・妻が「国民健康保険の被保険者」だった場合、違う医療保険制度のため医療費の合算はできません。

自己負担限度額について

自己負担の限度額(年額)は、本人または世帯合計の所得に応じて変わります。

70歳以上※270歳未満※2
年収 約1160万円~

標報 83万円以上
課税所得 690万円以上

212万円212万円
年収 約770万円~1160万円

標報 53~79万円以上
課税所得 380万円以上

141万円141万円
年収 約370万円~770万円

標報 28~50万円以上
課税所得 145万円以上

67万円67万円
一般(年収 約156万円~370万円)

標報 26万円以下
課税所得 145万円未満※1

56万円60万円
市町村民税世帯非課税31万円34万円
市町村民税世帯非課税

(所得が一定以下)

19万円※3
  • ※1.収入の合計額が520万円未満(1人世帯の場合は383万円未満)の場合及び旧ただし書所得の合計額が210万円以下の場合も含む。
  • ※2.対象世帯に70~74歳と70歳未満が混在する場合、まず70~74歳の自己負担合算額に限度額を適用した後、残る負担額と70歳未満の自己負担合算額を合わせた額に限度額を適用する。
  • ※3.介護サービス利用者が世帯内に複数いる場合は31万円
  • ※75歳以上の後期高齢者医療制度加入者も70歳以上と同じ限度額です。ただし医療保険制度が違うため、74歳以下の世帯員との合算はできません。

申請方法

高額介護合算療養費制度を申請する場合、基準日(7月31日)現在で加入している医療保険の窓口で手続きする必要があります。
なお、加入している公的医療保険が「国民健康保険」「後期高齢者医療保険」以外の場合(協会けんぽや会社の保険など)、事前に市区町村から「介護保険自己負担額証明書」の取得が必要です。ただしマイナンバーを利用すれば、自己負担額証明書の添付を省略できます。

実際、介護にはどのくらいの費用がかかるの?



なかなか想像しにくい、介護にかかる費用。
平均を知っておけば、介護費用準備の目安にもなりますね。

介護費用の難しさは、介護の程度や続く期間が予測できないことです。在宅介護・訪問介護・施設介護など、介護の形態によっても、費用が大きく変わります。
どちらにせよ重要なのは、介護費として現金の備えがいること。
介護保険の特性として、最低でも1割の自己負担があるためです。

平均をおさえつつ、家族の思いや経済状況にあわせて、余裕をもった介護準備ができると不安が少なくなります。

それでは、介護にかかる費用についてのデータを見ていきましょう。

介護にかかる費用についてのデータ

■ 介護期間

6カ月未満6カ月~1年未満1~2年未満2~3年未満3~4年未満4~10年未満10年以上不明平均
6.4%7.4%12.6%14.5%14.5%28.3%14.5%1.7%54.5ヵ月
(4年7ヵ月)

介護期間:平均54.5ヵ月(4年7ヵ月)

■ 介護費用

<一時的な費用の合計>
掛かった費用はない15万円未満15~25万円未満25~50万円未満50~100万円未満100~150万円未満150~200万円未満200万円以上不明平均
15.8%19.0%8.6%6.8%9.1%6.0%1.9%6.1%26.7%69万円
<月額>
支払った費用はない1万円未満1万~2万5千円未満2万5千~5万円未満5万~7万5千円未満7万5千~10万円未満10万~12万5千円未満12万5千~15万円未満15万円以上不明平均
3.6%5.2%15.1%11.0%15.2%4.8%11.9%3.0%15.8%14.2%7.8万円

介護費用<月額>:平均7.8万円


介護にかかる期間の平均は5年、月額は8万円程度かかっています。
単純計算すると、8.3万円×61か月=506.3万円。
ここに、一時的にかかる費用の平均74.4万を加えると、580.7万円になります。

今後、医療のさらなる発達により、介護期間が延びることも予想されます。
介護への準備は早めから始めておくに超したことはありません。
親との話し合いの場を設け、介護費の準備や介護への考えについて認識を合わせておけると、いざというときにもスムーズに対応できます。

介護離職をする前に「介護休業制度」をチェック



仕事と介護の両立は悩ましい問題ですが、「介護休業制度」をできる限り利用し介護離職を避けることが、先の長い介護を乗り切るためのポイントです。

介護離職がもっとも多くなる年代は50代後半。離職しなければ得られるはずの賃金や、50歳という年代の再就職の難しさを考えると、介護離職による経済的負担は深刻です。経済的な問題だけでなく、介護だけに専念することによって孤独感を強めたり、周りに助けを求めづらい環境になるなど、肉体的・精神的負担も大きくなります。

いざ親の介護の問題に直面した場合は、国の法律で定められている「介護休業」の制度を使い、仕事を辞めずに無理せず介護と両立させることを目指しましょう。休業中は介護休業給付金の支給もあります。
それでは、介護休業制度の詳細について解説していきます。

介護休業制度

介護休業制度は、要介護状態になった対象の家族(自身の配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫)の介護のために一定期間の休業ができる制度。国の法律である「育児・介護休業法」に定められている休業制度ですので、対象の労働者はどのような勤務先であっても休業請求できます。
休業中は給付金もあるため、「介護と仕事の両立のための準備期間」として利用することが可能です。

介護休業の取得を検討する際は、なるべく早めに職場に相談しましょう。復帰後の部署や職場との関係のことも考え、スムーズな引き継ぎができると安心です。

介護休業給付制度の詳しい内容は、以下の通りです。

取得対象者

  • 入社1年以上の労働者であること。
  • 取得予定日から起算して、93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと

取得回数

対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業可能です。

給付金について

介護休業を開始した日前2年間に雇用保険の被保険者期間が12か月以上だった場合、介護休業期間中に休業開始時賃金月額の67%の介護休業給付金が支給されます。

手続きについて

休業開始予定日の2週間前までに、書面等により事業主に申出します。

民間の保険で備えるのもオススメ

自分がいざ介護を受けるときに公的介護保険だけでは備えに不安がある場合は、民間の保険も検討してみましょう。

現在、各保険会社からさまざまな介護保険が販売されています。
その内容も、公的介護保険の「要介護認定」に連動して給付金が出るものや、保険会社独自の基準を設けて給付金が支払われるものなどがあります。とくに増加傾向がある認知症への備えが手厚いものなどもでてきました。

公的介護保険制度は3年に1度、政府によって保障内容が見直されています。直近の改定でも、現役並みに所得がある人の負担割合が増えるなど、今後も利用者にとって負担となる改定が行われる可能性も低くはありません。
民間の保険で、早めに介護費用の準備をすることも視野にいれてみてはいかがでしょうか。

まとめ


親の介護について考えるときに知っておくべき情報について、もう一度まとめます。

  • 公的介護保険は、原則自己負担1割で介護サービスを受けられる制度。
  • 公的介護保険の対象となるには、「要介護認定」を受ける必要がある。
  • 「1年間の医療費・介護費の合算」が上限を超えた分払い戻される、「高額介護合算療養費制度」がある。
  • 介護休業制度を活用する。
  • 不安な場合は、民間の保険を使うこともおすすめ。


する側もされる側も、介護の負担を減らすことを第一に考えるのが、無理なく続ける大原則。
介護への備えや情報収集・話し合いは、早くから準備を始めれば始めるほど、後々の精神的負担が軽くなります。

この記事が、家族で介護の話をするきっかけになれば幸いです。






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この記事を書いた人
pomocopomoco

元金融会社勤めのフリーランスライター/2級FP技能士資格保有
FP資格の知識を生かし、金融全般や家計といったジャンルを中心に執筆活動中。
会社員のときに感じていた「ワーママの毎日に楽しい!を増やしたい」というテーマで、日々情報を発信しています。

出典

「介護保険制度における要介護認定の仕組み」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kentou/15kourei/sankou3.html

「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」(生命保険文化センター)
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/nursing/4.html

「高額介護合算療養費制度の見直しについて」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000533189.pdf

掲載内容は執筆時点の情報であり、変更される場合があります。
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