ヤングケアラーとは?問題点や対策を解説

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ヤングケアラーとは?問題点や対策を解説

ヤングケアラーとは、一般的に親や祖父母の介護を担当する若者を指します。
厚生労働省と文部科学省の合同チームによる調査によると、ヤングケアラーに該当すると考えられる子どもは、中学生の約5.7%、高校生の約4.1%も存在しているのです。

高齢者や共働き世帯が増加したことにより、ご自身が学生であったころよりも介護の問題は身近になってきています。
子どもや孫に介護の負担を強いらないようにするためには、家族が介護状態となる前に対策することが大切です。

本記事では、ヤングケアラーの問題点だけでなく、対策を検討するときに知っておきたい公的介護保険制度や民間介護保険なども解説します。

ヤングケアラーの問題点

ヤングケアラーの問題点には「学業や進学に影響が出る」や「相談できる人がいない」などがあります。

中学生や高校生などの学生にとって、家族を介護しながら学業を両立するのは容易ではありません。
介護に時間が割かれることで「宿題や勉強の時間が取れない」「睡眠時間を確保できない」「友達と遊ぶ時間がない」などの問題が発生します。

勉強時間を充分に確保できないことで、進路を変更せざるを得ない生徒や、通学すらできない生徒もいます。
介護と学業の両立による精神的な負担と肉体的な負担が重なることで、体調を崩してしまうヤングケアラーも珍しくありません。

すでに社会に出ているヤングケアラーの中には、介護費用や食事代、日用品代などを負担して経済的に困窮している人もいます。

加えて「学校で介護のことを相談できる友達が少ない」「役所の担当者によっては取り合ってくれない」など、周りに相談しにくいのもヤングケアラーの問題点です。
親族や自治体からの協力が得られず、誰にも相談できずに抱え込んでしまう人も少なくありません。

子どもや孫の介護負担を軽減するためには「誰が介護をするのか」「介護費用をどのように賄うのか」「公的介護保険をどこで申請するのか」などを、事前に家族で話し合っておくことが大切です。

また、ヤングケアラーに対する支援を始める自治体が増えてきているため、お住まいの自治体が実施する制度を確認するのも有効な対策です。

公的介護保険を理解する

40歳以上の人は、原則として公的介護保険に加入して被保険者となり、保険料を負担しなければなりません。
公的介護保険の加入者は、認知症や骨折などが原因で介護が必要な状態となった場合に、所定の介護サービスが1~3割の自己負担で利用できます。

公的介護保険の被保険者は、65歳以上の「第1号被保険者」と40~64歳の「第2号被保険者」の2種類です。

第1号被保険者は、介護を必要とされる状態と判断された場合に、所定の介護サービスを利用できます。
第2号被保険者は、末期がんや関節リウマチなど、16種類の特定疾病が原因で介護が必要な状態とならなければ、公的介護保険の介護サービスを利用できません。

公的介護保険の申請方法

公的介護保険による介護サービスを利用するためには、本人または家族がお住まいの市区町村に申請をし、調査・判定を受けなければなりません。

申請後は、調査員の訪問調査や主治医の意見書などをもとに、コンピュータや介護の専門家による判定が行われます。
判定の結果、介護の予防が必要な「要支援1・2」、介護が必要な「要介護1~5」、対象とならない「自立(非該当)」のいずれかに認定されます。

要介護または要支援と認定された場合は、介護を受ける本人の希望に応じてケアプランを作成し、利用するサービスを決めます。
ケアプランは、ケアマネジャーに相談して作成するのが一般的です。

日々の介護に追われることで、公的介護保険の申請を失念しているヤングケアラーもいます。
家族の誰かが他人の介助がないと生活できなくなった場合、まずは自治体の窓口に相談し公的介護保険の申請をしましょう。

公的介護保険の介護サービス

公的介護保険で受けられる介護サービスは、要介護状態と要支援状態によって異なります。
要介護状態と認定された場合に受けられる介護サービスの例は、以下のとおりです。

  • 在宅サービス:訪問介護・訪問入浴などの訪問サービスや、デイサービス・デイケアへの通所による介助や機能訓練などが受けられる
  • 施設型サービス:介護老人保健施設や特別養護老人ホームに入所して介護サービスが受けられる
  • 地域密着型サービス:定期巡回・随時対応型訪問介護看護や小規模多機能居宅介護など住み慣れた地域で介護サービスが受けられる
  • 車イスや特殊寝台などのレンタル
  • 手すりの増設や段差の解消などの住宅改修費用の支援


一方で、要支援と認定された場合は「介護予防給付」や「介護予防・日常生活総合支援事業」など、介護の進行を防ぐためのサービスを利用できます。
サービスの内容は、在宅サービスと一部の地域密着型サービスであり、施設型サービスは利用できません。

また自立(非該当)と認定された人は、基本チェックリストによる確認・判定の結果によっては訪問介護や通所介護などのサービスを利用できる場合があります。

公的介護保険を利用した場合の自己負担額

公的介護保険の自己負担割合は、原則として1割です。
ただし介護を受ける人の所得によっては、2~3割負担となる場合があります。
また公的介護保険には、以下のとおり介護レベルに応じた利用限度額が設定されており、超過した金額は利用者の全額自己負担です。

要支援1:5,032単位
要支援2:10,531単位
要介護1:16,765単位
要介護2:19,705単位
要介護3:27,048単位
要介護4:30,938単位
要介護5:36,217単位

※1単位=約10円で、地域により異なります。
たとえば1単位=10円の地域の場合、要支援1の利用限度額は50,320円となり、1割負担の方なら5,032円になります。

介護サービスを利用できる限度額は以上のとおりですが、一方でひと月(1日~月末まで)の自己負担上限額を超えた場合は、「高額介護サービス費制度」を利用することで、超過した金額を払い戻してもらえます。同じ世帯で、複数の介護サービスを利用する人がいる場合は、世帯で自己負担額を合算できます。

自己負担上限額は、下記のとおり所得によって決まっています。

高額介護サービス費における負担上限額(月額)

所得の段階区分負担の上限額(月額)
課税所得690万円(年収約1,160万円)以上140,100円(世帯)
課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満93,000円(世帯)
市町村民税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満44,400円(世帯)
世帯の全員が市町村民税非課税24,600円(世帯)
前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方等24,600円(世帯)
15,000円(個人)
生活保護を受給している方等15,000円(世帯)

ただし公的介護保険の利用だけでは、介護サービスの自己負担を0円にはなりません。また特殊寝台をはじめとした介護用品の購入費用や食事代、おむつ代などは全額自己負担です。

民間介護保険や認知症保険で介護に備える

介護が必要となった場合の金銭的な負担に、貯蓄だけで備えられない可能性がある場合は「民間介護保険」や「認知症保険」への加入を検討すると良いでしょう。

公的介護保険は、所定の介護サービスを一定の自己負担で受けられる「現物給付」の制度です。
対して民間介護保険や認知症保険は、支払要件を満たした場合に「年金」または「一時金」あるいはその両方が受け取れる「現金支給」の金融商品です。

年金は、介護サービス利用時の自己負担分や食事代などの毎月発生する支出に、一時金は、住宅の改修費用や介護用品の購入費用などの初期費用に充てられます。

給付金の支払要件

民間介護保険の給付金支払要件は、公的介護保険の要介護度に連動している場合や保険会社が独自に定めている場合があります。
保険会社によっては、両方を組み合わせて支払いを判定する場合もあるのです。

認知症保険の支払要件は「所定の検査によって認知症と診断された」「認知症と診断されて公的介護保険の要介護1以上や要介護2以上と認定された」などです。中には、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)でも給付金が支払われる場合があります。

民間介護保険や認知症保険の支払要件は、保険会社によって異なるため、よく確認したうえで加入することが大切です。

介護休業や介護休暇の利用も検討する

仕事が忙しいために、自身の親の介護を、子どもに任せてしまうことがあります。こうした事態を防ぐためには、「介護休業」や「介護休暇」を利用する方法があります。

介護休業とは、2週間以上にわたって、常時介護を必要とする家族がいる場合に休みを取得できる制度です。
介護が必要な家族1人につき、要介護状態にいたるごとに通算93日までの休みを取得できます。※分割して休みを取得する場合は3回まで。

介護休暇とは、会社員が働きながら介護をするために、短期間の休暇を取得できる制度です。
介護が必要な家族1人につき年に5日まで、対象家族が2人の場合は10日まで休暇の取得が可能です。

介護休業や介護休暇を取得したときに、給与が支払われるかどうかは、就業規則に定められています。
介護休業や介護休暇以外にも労働時間の短縮やフレックスタイムの導入など、独自の対応を実施している企業もあるため、就業規則を確認すると良いでしょう。

介護休業や介護休暇の取得時に給与が受け取れない場合は、雇用保険から「介護休業給付金」を受け取れます。
介護休業給付金の給付額は、休業を開始する前における賃金日額の67%です。

介護が必要な状態となる前に対策を検討しよう

介護が必要な状態となる前に対策を検討しよう
介護が必要な状態となった場合、公的介護保険による介護サービスを利用して介護をする人の負担を軽減できます。
仕事が忙しい方は、介護休業や介護休暇も利用して、介護の負担が家族の誰かに集中しないように対策をすることが大切。

介護が必要となった場合の金銭的負担に備える方法として、民間介護保険や認知症保険があります。
自分で探すのが難しい、自分に必要な保障がわからないかたは、保険会社や代理店などの「保険のプロ」に相談するのがオススメです。

ニッセンライフでは、対面で相談することはもちろん、インターネットを使ったWEB(オンライン)面談もできます。
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この記事を書いた人
品木彰品木彰

保険、不動産、住宅ローンなどの記事を執筆するフリーランスライター。大手生命保険会社、人材会社の勤務を経て2019年1月にして独立。記名記事多数。
保有資格:2級FP技能士

出典

「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム 第2回会議 議事録」(厚生労働省・文部科学省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000772522.pdf

「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」(厚生労働省) 
https://www.mhlw.go.jp/content/000334526.pdf

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