公的介護保険制度があれば老後は安心?民間介護保険の必要性

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公的介護保険制度があれば老後は安心?民間介護保険の必要性

少子高齢化・超高齢社会の日本において、避けて通ることが難しい介護。
厚生労働省のデータによると、日常生活に制限がありながら生活する期間は平均約9~13年あるといわれています。
その期間に要支援・要介護認定を受けた場合、公的介護保険制度を活用すれば自己負担額は1~3割程度になります。

しかし、公的介護保険制度には対象外のサービスがあることや、公的介護保険制度が3年に1度改正されることを考慮しなければなりません。
そこで公的介護保険制度の上乗せとして民間介護保険が活用できます。

本コラムでは、なぜ民間介護保険が必要なのかを、公的介護保険制度との違いやデータをもとに解説します。

民間介護保険が必要な人・不要な人、必要な場合のおすすめの商品タイプなどもあわせて紹介しています。

1分でわかるこの記事の要点

  • 公的介護保険制度は介護サービスの「現物給付」であるため、自己負担額は年金や貯蓄でまかなう必要がある。
  • 冠婚葬祭や趣味のためなどの外出介助や、介護者の負担軽減のための家事代行など、公的介護保険の対象外サービスがある。
  • 民間介護保険は契約時に定めた保険金が受け取れるため、継続的にかかる自己負担額や対象外のサービスに備えられる。
  • 民間介護保険は保障対象の条件や保険金の受け取り方などさまざまなので、しっかり比較・検討が大切。
  • 民間介護保険が必要な人は、預貯金などで介護費用の備えができていない人や、家族などの介護者の負担を減らしたい場合。


公的介護保険制度と民間介護保険の違い

公的介護保険制度と民間の介護保険は大きく分けて3つの違いがあります。
それぞれの違いから、民間介護保険の仕組みについてかんたんに解説します。

加入方法と保険料の支払い

公的介護保険制度は社会保険のひとつであるため、40歳以上は強制的に加入することになっています。
加入するときに手続きはとくになく、会社員は給与天引き、自営業者は国民健康保険料に上乗せされます。
65歳以上は原則年金から天引きされ、年金天引きができない場合は納付書や口座振替で納付します。

一方で、民間介護保険は保険会社が運営しており、一般的には20歳以上で任意加入です。
加入するときに健康状態の告知が必要になるため、持病や過去に病気やケガの治療歴があると加入が難しくなるケースがあります。
保険料は年齢・性別・保障内容によって変わり、口座振替やクレジットカード払で保険会社に支払います。

給付・保障条件

公的介護保険制度を利用するためには、要介護認定が必要になります。
要介護認定とは、介護サービスの必要度(どれ位、介護のサービスを行う必要があるか)を判断するものです。
40~64歳は要介護認定だけではなく、特定疾病※1が原因で介護が必要になったという条件が加わります。
※1 特定疾病とは、がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)や関節リウマチなど、厚生労働省が定めた16疾病のこと

民間介護保険は、保険会社所定の条件に該当すれば保険金が支払われます。
所定の条件には、公的介護保険制度連動タイプと保険会社の独自基準タイプがあります。

公的介護保険制度連動タイプの場合、要支援・要介護認定を受けた場合に保険会社所定の保険金が支払われます。
保険会社の独自基準タイプは、保険会社があらかじめ定めた心身の状態によって判断するため、要支援・要介護認定を受けたとしても、独自基準に該当していなければ保険金は受け取れません。

給付・保障内容

公的介護保険制度は「現物給付」が原則で、受けた介護サービスの費用の一部が介護保険として保障され、残りの1~3割を自己負担で支払うことになっています。

民間介護保険は、基本的に保険金(現金)で給付されます。
保険金の受け取り方は、まとまった金額が受け取れる一時金タイプ、定期的に保険金が受け取れる年金タイプ、一時金・年金併用タイプがあります。

現金給付なので使い方は自由。
有料老人ホームの入居一時金などのまとまったお金として使うこと、介護サービスの自己負担費用に使うこともできます。
契約内容によっては、保険料の支払いが高額になることや、介護が長期化した場合にお金が不足するケースがあります。


表:公的介護保険制度と民間介護保険の違い まとめ

公的介護保険制度民間介護保険
運営市区町村(お住まいの自治体)保険会社
加入年齢40歳以上
強制加入
20歳以上※商品によって異なる
任意加入
健康状態の告知が必要
保険料市区町村によって保険料率が異なる
64歳以下の会社員は給与天引き、自営業は国民健康保険料に上乗せ
65歳以上は原則年金天引きで、それ以外は納付書・口座振替がある
年齢・性別・保障内容によって変わる
口座振替やクレジットカード払で保険会社に支払う
給付条件市区町村の窓口で申請し、要支援・要介護認定を受けること
40~64歳は特定疾病が原因で要介護認定を受けた場合
保険会社所定の介護状態に該当すること
条件は保険会社・商品によって異なる
給付内容所定の介護サービス現金(保険金)
給付の受け取り方保障対象の介護サービスを利用した場合、支給限度額以内で、自己負担額1~3割で利用できる一時金、年金、一時金・年金併用のいずれかから選択することが多い

民間介護保険の活用例

公的介護保険制度があるため、保険料をしっかり払っていれば1~3割負担で介護サービスが利用できます。
ではなぜ民間介護保険が必要なのでしょうか?
民間介護保険が必要とされる一番の理由は、「公的介護保険制度だけではカバーできないお金に備えられる」からです。

この章では、公的介護保険制度を補填する民間介護保険の活用例を紹介します。

公的介護保険制度には給付対象外のサービスがある

健康保険でも差額ベッド代や目のレーシック手術など対象外のものがあるように、公的介護保険制度でも給付対象外になるサービスがあります。

基本的に公的介護保険制度は、掃除や洗濯などの生活援助や、食事や排せつの介助などの身体介護に関係するものが適用されます。
そのため、冠婚葬祭や趣味のための外出介助や、家族などの介助者の援助となる家事支援などは対象外です。
ほかにも、要支援・要介護度ごとに支給限度額を超えてサービスを利用した場合は、超えた分のお金は全額自己負担(10割負担)になります。

民間介護保険なら現金給付で利用方法は自由。
給付対象外のサービスを利用した場合など、全額自己負担になったサービス費などに活用することができます。

介護サービスの自己負担費用

公的介護保険制度対象外を活用しても1~3割の自己負担費用がかかります。

生命保険文化センターの[2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」]によると、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、住宅改造や介護用ベッドの購入などの一時費用の合計が平均74万円、月々の費用が平均8.3万円というデータがあります。

かからなかったという人もいますが、一時金で200万円以上かかったケースが5.6%、月額で15万円以上かかったケースが16.3%というように、介護費用が高額になることもあります。

生活費や介護保険料に加えて自己負担費用が必要になるので、年金だけでは費用をまかなえないことがあるかもしれません。
民間介護保険なら自己負担費用が高額になった場合にも備えられるので、介護を受けるときの選択肢を広げることにもつながります。

40~64歳の給付条件が厳しいときの上乗せ保障

40~64歳で介護が必要になった場合、原因が特定疾病以外は給付対象外になります。
子供がいるなど家族を養う立場の人で介護が必要になった場合、介護費用の負担だけではなく、働けないことによる収入減にも備えておく必要があるかもしれません。
民間介護保険によっては、交通事故など特定疾病以外で介護が必要になった場合でも保障される商品があります。
公的保障が少ない時期に民間介護保険を上乗せして手厚くすることで、万が一のときにも安心です。

民間介護保険のメリット・デメリット


老後・介護資金を準備する方法は、iDeCo(確定拠出年金)やつみたてNISA、個人年金保険などがありますが、そのうちのひとつとして民間介護保険があります。
この章では民間介護保険で介護資金を備える場合のメリット・デメリットを解説します。

民間介護保険のメリット

民間介護保険のメリットは、公的介護保険制度の対象外サービスにも活用できることや、給付条件が厳しい40~64歳の上乗せ保障として活用できるところです。

民間介護保険なら保障内容をはじめ、保険金の受け取り方、貯蓄性の有無、保険金額など自由に選んで契約ができます。
たとえば、メインは預貯金で備えて一時金は保険で備える、働き盛りの時期の上乗せ保障、介護が長期化したときに備えるなどがあります。
自分がどんな風に介護を受けたいのか、ライフスタイル、家族構成などを考慮して民間介護保険を選びましょう。

民間介護保険のデメリット

民間介護保険のデメリットは保険料の負担と保険選びが難しいことです。

公的介護保険の保険料に加えて民間介護保険料が必要になります。
子育て世代などで出費が多い、家計が厳しい状態で加入することで、そのときの生活が犠牲になることや、最悪の場合途中で保険を解約してしまい、いざというときに使えないという可能性があります。

老後に備えることも大切ですが、今の生活がひっ迫しないかどうか、年金生活に入っても保険料が支払えるかどうか、計画を立てて保険を検討することが大切です。

また、民間介護保険は商品によって給付条件が異なるため、備えたい保障と給付条件が一致していないと、いざというときに受け取れないということがあります。
民間介護保険の給付条件は、公的介護保険制度と連動しているタイプと保険会社独自タイプがあります。
加入しようと思っている保険がどのタイプなのかをしっかり確認しましょう。

民間介護保険が必要な人・おすすめの商品タイプ

民間介護保険は必ず加入しなければならない保険ではありません。
参考として、以下のような状況の場合は老後・介護への備えを検討することをおすすめします。

  • 介護のための預貯金がない
  • 国民年金のみなど、公的年金で受け取れる金額が少ない
  • 介護を頼める親族などがいない


民間介護保険は、公的介護保険制度だけでは足りない部分を備えるための保険です。
民間介護保険を検討するときは、公的介護保険制度や今加入している保険の保障内容をしっかり確認することが大切です。

介護保険が不要な人

介護保険の必要性が低い・不要な人は以下のような状況です。

  • 介護のための預貯金が400万円以上など、一定金額あること
  • 公的年金などで月20~40万円程度受け取れる場合
  • 介護を頼める親族がいる


ただし、必要性が低い・不要な場合であっても、介護をどんな風に受けたいのかなどによっては、民間介護保険への加入を検討することをおすすめします。
たとえば、手厚い介護サービスを希望する、親族への介護負担を減らしたい、介護が長期化して預貯金が不足するリスクを減らしたいなどがあります。

まとめ:どんな風に老後・介護生活を過ごしたいかによって備え方を考えましょう

生きている限り「老い」は誰にでも必ずあります。
しかし、介護が必要になるかどうか・介護期間は、そのときになってみないとわかりません。
介護に限らず、病気や死亡などのリスクについても同じことが言えます。

保険は、万が一のリスクに備えられますが万能ではありません。
保険商品と契約者・被保険者のニーズにあっていなければ、いざというときに使えないということがあります。

民間介護保険を検討するときは自分がどんな風に老後・介護生活を過ごしたいかを考え、公的介護保険制度でどれくらいカバーできるのかを確認することから始めましょう。
不足する部分が見えてきたら、預貯金と保険のバランスを考えながら備えることが大切です。


民間介護保険は給付条件や給付金の受取方など、色んな種類があります。
自分で一つひとつ確認していくのは大変なので、保険会社や代理店などに相談することをおすすめします。

ニッセンライフなら、複数の保険会社を取り扱う代理店なので、1回の相談でまとめて比較・検討ができます。
また、対面で相談することはもちろん、インターネットを使ったオンライン面談も可能です。ぜひお気軽にご相談ください。




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この記事を監修した人
伊藤 可菜伊藤 可菜

大手生命保険会社の勤務を経て、2020年にニッセンライフに入社。
FPナビを中心にライフプラン相談などを行っており、丁寧でわかりやすい情報提供を心がけている。
保有資格:2級FP技能士

出典

2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」(生命保険文化センター)
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf

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