知らないと損!高額療養費制度とは?申請方法や対象になる費用まとめ

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知らないと損!高額療養費制度とは?申請方法や対象になる費用まとめ


病気やケガで入院・手術をすると、高額な医療費がかかることもあります。治療期間に仕事を休むことで、収入が減ってしまうリスクも。 
こうしたリスクに備えられるのは民間の医療保険ですが、検討する前にぜひ知っておきたい制度があります。それが、高額な医療費を支払ったときに返還される高額療養費制度です。 
実は、みなさんはすでに高額療養費制度が使える公的保険に加入しています。民間の医療保険を検討する前に、まずは高額療養費制度について押さえておきましょう。

高額療養費制度とは、医療費の自己負担分が払い戻される制度


高額療養費制度とは、簡単に言うと「同月に支払った医療費が一定額を超えて高額になったとき、返ってくる」という制度です。と言っても病院から返還されるわけではなく、加入先の健康保険から振り込まれる点に注意しましょう。 
みなさんは現在、何らかの公的保険に加入しています。協会けんぽや共済、組合健保など勤務先で加入する社会保険か、自治体が運営する国民健康保険です。75歳以上になれば誰でも後期高齢者医療制度に加入しますが、どの保険であっても高額療養費制度が使えるので必ず覚えておきましょう。 

【高額療養費制度のイメージ】 



仮に医療費が100万円だった場合、3割負担の方は30万円を病院に支払います。しかし本人が69歳以下で年収約370万円~約770万円だった場合、あとから21万2,570円返ってくるのです。つまり、実質の医療費負担は8万7,430円。 

これはひと月あたりの自己負担上限額で、「8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1%」に当てはめて算出します。 

高額療養費制度の自己負担上限額は人によって違う

ただし、誰でも同じ上限額というわけではありません。年齢や年収によって異なるため、下記の表を目安にしてみてください。会社によっては独自の付加給付制度があり、さらに医療費負担が抑えられる可能性もあります。自身の自己負担上限額と一緒に確認してみましょう。

69歳以下の方

適用区分ひと月の上限額
年収約1,160万円~
健保:標準報酬月額83万円以上
国保:所得901万円超
25万2,600円+(医療費ー84万2,000円)×1%
年収約770万円~約1,160万円
健保:標準報酬月額53万円~79万円
国保:所得600万~901万円
16万7,400円+(医療費ー55万8,000円)×1%
年収約370万円~約770万円
健保:標準報酬月額28万円~50万円
国保:所得210万~600万円
8万100円+(医療費ー26万7,000円)×1%
~年収約370万円
健保:標準報酬月額26万円以下
国保:所得210万円以下
5万7,600円
住民税非課税世帯3万5,400円

70歳以上の方

適用区分ひと月の上限額(世帯ごと)うち外来(個人ごと)
現役並み現役並み所得者Ⅲ 年収約1,160万円~
標準報酬月額83万円以上
課税所得690万円以上
25万2,600円+(医療費ー84万2,000円)×1%
現役並み所得者Ⅱ 年収約770万円~約1,160万円
標準報酬月額53万円以上
課税所得380万円以上
16万7,400円+(医療費ー55万8,000円)×1%
現役並み所得者Ⅰ 年収約370万円~約770万円
標準報酬月額28万円以上
課税所得145万円以上
8万100円+(医療費ー26万7,000円)×1%
一般年収156万円~約370万円
標準報酬月額26万円以下
課税所得145万円未満等
5万7,600円1万8,000円[年14万4,000円]
住民税非課税等Ⅱ住民税非課税世帯2万4,600円8,000円
Ⅰ住民税非課税世帯(年金収入80万円以下など)1万5,000円8,000円

 

さらに自己負担を軽減できる条件がある!

高額療養費制度はそれだけでも頼りになる制度ですが、世帯合算と多数回該当についても覚えておきましょう。頻度は少ないもののさらに負担を軽減できるので、知っておいて損はないですよ。

世帯合算

同じ健康保険に加入している家族が同月に医療費を支払ったとき、それぞれ合算できる場合があります。例として69歳以下の場合を計算してみましょう。 
 
【世帯合算の計算例】 
■夫(40歳)妻(40歳・被扶養者)で標準報酬月額40万円の世帯が10月に支払った医療費 

入院/外来支払先自己負担額総医療費
入院医療機関A15万円50万円
外来医療機関A1万5,000円5万円
外来医療機関B3万円10万円
外来医療機関A3万円10万円
外来医療機関C3,000円1万円


69歳以下の場合、世帯合算できるのは自己負担が2万1,000円を超えた分(太字)だけです。
※夫が①と②で同じ医療機関Aに支払っていますが、入院と外来は別で考えるため②は合算の対象外です。 
 
この場合、高額療養費としていくら返ってくるのでしょうか。まず自己負担上限額「8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1%」を求めてから、実際に支払った自己負担額を差し引いて計算してみましょう。 

  • 総医療費
    50万 + 10万円 + 10万円 = 70万円
  • 自己負担上限額
    8万100円 + (70万円 - 26万7,000円) ✕ 1% = 8万4,430円
  • 実際に支払った自己負担額
    15万円 + 3万円 + 3万円 = 21万円
  • 高額療養費として返ってくる金額
    21万円 - 8万4,430円 = 12万5,570円

つまり、「いったん21万円を支払うけど後から12万5,570円返ってくるので、実質負担は8万4,430円になる」ということです。 

多数回該当

もう一つ覚えておきたいのは、多数回該当について。高額療養費の対象となる月が直近12か月の間に3回あると、4回目以降の限度額がさらに引き下げられるという制度です。 

69歳以下の方

所得区分本来の負担の上限額多数回該当の場合
年収約1,160万円~の方252,600円+(医療費-842,000円)×1%140,100円
年収約770万~約1,160万円の方167,400円+(医療費-558,000円)×1%93,000円
年収約370万~約770万円の方80,100円+(医療費-267,000円)×1%44,400円
~年収約370万円57,600円44,400円
住民税非課税者35,400円24,600円

標準報酬月額とは、毎年4、5、6月に支給された報酬の平均をもとに算出した金額です。区分がわからないときは、加入している健康保険に確認するいいでしょう。

70歳以上の方 

所得区分本来の負担の上限額多数回該当の場合
年収約1,160万円~の方252,600円+(医療費-842,000円)×1%140,100円
年収約770万~約1,160万円の方167,400円+(医療費-558,000円)×1%93,000円
年収約370万~約770万円の方80,100円+(医療費-267,000円)×1%44,400円
~年収約370万円57,600円44,400円
※「住民税非課税」の区分の方については、多数該当の適用はありません。
 

入院が長引くと医療費がかさばる不安もありますが、実は公的保険によってかなり助けられるということです。 
実際に計算しようとすると難しく感じるので、医療費が高額になったときは健康保険の窓口に確認するといいですよ。 

高額療養費の申請方法2つ

高額療養費の対象になりそうなとき、どのように申請したらいいのでしょうか。ここでは申請方法について、2つのパターンを解説します。 

すでに医療費を払った場合

すでに医療費を支払っている場合は、加入している健康保険窓口に申請しましょう。添付書類として、病院の領収書や口座番号のわかるものが必要になるケースもあります。申請が二度手間にならないよう、事前に持ち物を確認することが重要です。 
医療費のデータは保険者にも届いているため、高額療養費制度の対象となる方には自動的に申請書が送られることもあります。またあらかじめ入金口座を登録しておくと、対象になったときに自動で振り込んでくれる保険者もあります。 
日頃から郵送物等や医療費のお知らせなどはチェックしておきましょう。 

これから医療費を支払う場合

入院が決まったときなど、まだ医療費を支払う前ならぜひ手に入れておきたいものがあります。それは、限度額適用認定証。 
医療費を請求する病院側は患者さんの年収区分がわからないので、とりあえず3割分を請求します。しかし保険証と一緒に限度額適用認定証を提示すれば、自己負担上限額までの請求しかされません。つまり、いったん高額な医療費を立て替える必要がないのです。 
 
申請場所は同じく健康保険の窓口です。限度額適用認定証は有効期限が決まっていることもあるので、期限切れに注意しましょう。 

高額療養費制度の注意点

私たちの医療費負担を軽減してくれる高額療養費制度ですが、注意点もあります。

計算期間

医療費が自己負担上限額を超えているかどうかは、毎月1日~末日で計算します。たとえば入院が2か月にまたがる場合は、それぞれ申請が必要(申請書が2枚)になるので注意しましょう。逆に入院期間を合計すれば自己負担上限額を超えていても、それぞれの月で超えていない場合は高額療養費の対象になりません。あくまで1日~末日という期間ごとの計算になることを覚えておきましょう。

消滅時効

高額療養費はいつでも申請できるわけではありません。診療を受けた月の翌月初日から2年が経つと申請できなくなるため、高額な医療費を支払った場合はできるだけ早く申請しましょう。

対象外の費用

高額療養費の対象になるのは、基本的に保険が適用される医療費だけです。 
入院中の差額ベッド代や食事代、先進医療を受けたときの費用などはすべて自己負担になるので、誤解しないようにしましょう。 
 
この対象外の費用というのは重要ポイントなので、もう少し詳しく見ていきます。 

高額療養費制度の対象外費用に備える方法

一般的な所得の世帯なら、高額療養費制度のおかげでひと月あたり約8万円に抑えられるとはいえ、対象外の費用がネックになりそうです。 
生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」によれば、世帯主が入院した場合に保険適用外の費用で必要と考える資金は月額24.2万円。 
 
このような費用に備える方法として、民間の医療保険が選択肢となるのです。 
つまり高額な医療費や長引く入院費というよりは、公的医療保険の対象外となる費用に備えるために、民間医療保険を検討することが大切だといえます。 
 
ただし貯金が少ない方はこの限りでありません。高額療養費制度があるとはいえ、貯金が少ない方にとって毎月8万円程度の支出は死活問題です。ある程度貯金が貯まるまでは、「日額10,000円~15,000円程度の入院給付金」や「20~30万円程度の入院一時金」で備えておくと安心でしょう。 

高額療養費制度を知らないと損する!

高額療養費制度を知らないままでは、高額な自己負担額が払い戻されないどころか、必要以上の医療保険に加入してしまうかもしれません。 
 
大事なポイントをおさらいしましょう。 
・高額療養費制度とは、自己負担上限額を超えて支払った医療費が返ってくる制度 
・自己負担上限額は年齢や年収によって異なる 
・世帯合算や多数回該当など、さらに負担を軽減する条件もある 
・対象外の制度もあるため、その分は民間の医療保険で備える 
 
公的保障が把握できれば、次は高額療養費対象外の費用への備えとして、民間の医療保険を検討しましょう。ニッセンライフなら複数の保険会社商品を取り扱っているので、幅広い商品の中から自分に合う医療保険を見つけられます。 



自分に合う保険がわからない場合は、保険のプロに相談しましょう。ニッセンライフでは電話相談やオンライン相談など、お客さまのニーズに合わせて選べる相談方法をご用意しています。ぜひお気軽にご相談ください。




出典

「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」 (厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf 
「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」 (生命保険文化センター)
https://www.jili.or.jp/research/report/8361.html 

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