病気解説
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群(英語名SAS=サス)とは、その病名のとおり、「睡眠中に呼吸が断続的に停止する」病気です。
1時間あたりで、10秒以上の無呼吸・低呼吸が5回以上(または、7時間あたりで10秒以上の無呼吸・低呼吸が30回以上)あり、イビキや日中の眠気、疲労感などをともなっている場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
では睡眠時無呼吸症候群ではどのような症状があらわれるのでしょうか。
まず喉がふさがれることで、十分に酸素を体内に取り込むことができなくなり、血液中の酸素が不足し、動脈硬化や不整脈を引き起こします。さらに無呼吸から無理に覚醒すると、身体を休めるための副交感神経よりも、交感神経が優位になり、血圧や血糖値が上昇します。
その状態が続くと、糖尿病や心疾患、脳卒中になるリスクが増します。
生活習慣病だけではありません。一晩中眠りが浅い状態が続けば、不眠症やうつ病など精神疾患を発症する可能性も高くなる上、症状が進行すれば「突然死」にいたることもあります
この病気は、睡眠中に空気の通り道である「気道」がふさがれることで引き起こされます。
その原因で一番多いのは肥満です。舌の周辺などに脂肪が付着することで、仰向けに寝た際に喉がふさがれやすくなるのです。
ただ、日本人などアジアの人に多い顎(あご)が細い骨格も実は、舌根や口蓋垂(のどちんこ)が落ち込んで気道がふさぎやすくなるため、睡眠時無呼吸症候群の要因になります。また、扁桃肥大(へんとうひだい)やアデノイドなどがあっても発症しやすくなります。
典型的な症状として「日中に眠くなる」ということがあり、自動車運転時などでの居眠り運転につながりかねません。睡眠時無呼吸症候群を原因とする大きな事件も発生しています。
2003年にJR山陽新幹線の運転士が最高時速270キロで走行中に、約8分間も眠ってしまったのです。幸い事故にはつながりませんでしたが、一歩間違えば大事故になるところでした。
このように睡眠時無呼吸症候群は放置していれば大変怖い病気ですが、自覚症状がないまま日常生活を送っている人も少なくありません。
ただ、イビキがひどかったり、睡眠中に無呼吸状態から呼吸を開始する際に出す「グワッ」という鋭い音を何度も立てていると、この病気にかかっている可能性があります。病院で検査を受けるべきでしょう。
保険加入
睡眠時無呼吸症候群にそなえる保険選び
睡眠時無呼吸症候群は、自覚症状が少なく、放置されていくことも少なくありませんが、放っておくと症状が進行し、知らぬ間にさまざまな生活習慣病を合併する可能性が高くなります。
また、日中の眠気などから自動車事故を起こす確率も高まることも知られています。
睡眠時無呼吸症候群は、生きるために必要な酸素を睡眠中に取り込むことができなくなるため、「万病のもと」ともいえる病気です。
そのため、医療保険や死亡保険(終身保険・定期保険)でそなえておくのにこしたことはありません。
睡眠時無呼吸症候群を意識して保険を検討する場合は、「症状が進行して他の病気になった場合の入院・手術にそなえる」という考え方が必要になってきます。
睡眠時無呼吸症候群を確定診断するための「終夜睡眠ポリソムノグラフィー(PSG)検査」では病院に1泊することになります。その場合、医療保険によっては「1泊入院」というあつかいになり、1日分または2日分の入院給付金が受け取れるケースがあります。ただ保険会社によって判断が異なりますので、保険加入の際には給付対象になるかならないか、事前に調べておきましょう。
睡眠時無呼吸症候群の治療の中心となるCPAP(シーパップ)療法は、機器をレンタルして自宅で睡眠中におこなう治療法のため、医療保険の入院保障や手術保障などは適用になりません。治療中は、月に1回の医師の診察が必要ですが、それも通院で済ませられます。
なお、睡眠時無呼吸症候群で治療をしている人や、治療の経験がある人は、通常の医療保険や死亡保険(定期保険・終身保険など)への加入は難しくなります。
なぜなら、前述のとおり睡眠時無呼吸症候群の症状が重くなれば糖尿病や心疾患、脳卒中になるリスクが増すため、入院や手術をすることや、死亡するリスクが健康な人よりも高くなるためです。
ただし、がん保険に関しては、睡眠時無呼吸症候群だからといってがんになるリスクが高くなるとはいえないため、お申し込みいただくことが可能です。
しかし、医療保険や死亡保険の加入をあきらめる必要はありません。
一般的な保険と比べて加入する条件(引受基準)が簡素化され、持病や既往症がある人でも申し込める「引受基準緩和型(ひきうけきじゅんかんわがた)」の医療保険や死亡保険があります。
引受基準緩和型の保険は、3~5項目の告知項目(質問事項)に該当しなければお申し込みいただくことが可能です。
もちろん、保険加入後に治療中の病気が悪化し入院や手術、あるいは万が一の場合も保障されます。
ただしこれらの保険は、通常の保険よりも保険料がやや割高になっているなど、さまざまな制約がつきます。
それでも、睡眠時無呼吸症候群などの持病・既往症の悪化だけでなく、それ以外の病気も保障しているため、保険でのそなえを必要とする方にとっては選択肢のひとつとなりえるでしょう。
なお、告知項目については保険会社によって異なりますので、ぜひ複数の会社をあわせてご検討下さい。
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商品の特長
- ●
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{{val.atnTitle}}保険料例(月払)
契約年齢 女性 {{tb.age}}歳 {{tb.woman}}円 契約年齢 男性 女性 {{tb.age}}歳 {{tb.man}}円 {{tb.woman}}円 試算条件
治療法
睡眠時無呼吸症候群の治療法
睡眠時無呼吸症候群は治療をしなければ、血液中の酸素濃度が低下して、生活習慣病やうつ病などを引き起こしかねない怖い病気です。
その治療にあたって、最も効果が大きいとされているのが「CPAP(シーパップ)療法」と呼ばれる方法です。
一口でいうと、鼻から空気を送り込み、喉がふさがらないようにする治療法です。
CPAP療法では専用の機器がもちいられます。この機器にはホースとマスクが接続されており、ホースを通じて空気が鼻から入り、喉に対して常に圧力をかける仕組みです。その結果、喉が閉塞するのがさまたげられて、空気のとおり道が確保できます。無呼吸状態にはならずに、睡眠中に十分に酸素を体内に取り込めるというわけです。
日本だけでなく世界的にも普及している治療法で、毎晩必ずCPAPのマスクを装着して寝ると、日々の無呼吸が緩和されます。
ただ、マスクを装着するわずらわしさなどから、治療を途中で断念する人も少なくありません。CPAP治療は「根治療法」ではなく、あくまで症状をおさえる「対処療法」となるため、治療を継続しなければ、無呼吸状態は再び現れます。
また、CPAP以外の治療法もあります。特に軽症の睡眠時無呼吸症候群の罹患者には、マウスピースを装着して、下あごを前にずらすことで、喉の閉塞を防ぐ治療法もあります。
また、扁桃肥大などがある人には、手術治療がほどこされる場合もあります。
ただ、現代の医学では、睡眠時無呼吸症候群に有効な薬剤は開発されていません。
なお、自分が睡眠時無呼吸症候群かどうかの検査や、その後の治療などは、病院の呼吸器内科やスリープクリニック(睡眠障害専門クリニック)などでおこなえます。家族などから「イビキがひどい」「睡眠中に呼吸が止まっている」などといわれたら、睡眠時の血中酸素の状態や脈拍数、呼吸状態などを調べる検査を実施することをオススメします。
治療費
睡眠時無呼吸症候群の治療費用
2018年に某病院にて睡眠時無呼吸症候群を治療した45歳男性の治療費実例にもとづき、患者さんが負担しなくてはならない費用の概算を計算しました。
医療にかかる費用 | |
---|---|
①健康保険適用医療費総額 (保険診療分) | 132,420円*1 |
②評価療養・選定療養等の総額(保険外診療分) | 0円*1 |
③医療費総額(①+②) | 132,420円 |
④窓口支払額(3割負担の場合*2①×30%) | 39,730円 |
⑤高額療養費の自己負担限度額*3 | 39,730円 |
⑥高額療養費による割戻額(④-⑤) | 0円 |
⑦医療費自己負担額(②+⑤) | 39,730円 |
その他の自己負担費用の概算 | |
⑧入院時食事療養費標準負担額*4 (1食460円×入院日数×3回) | 0円 |
⑨差額ベッド代 (1日6,144円×入院日数)*5 | 0円 |
⑩雑費(1日1,500円×入院日数)*6 | 0円 |
⑪合計自己負担額(⑦+⑧+⑨+⑩) | 39,730円 |
*1①②の治療費は、実在する患者の診療明細から監修医の判断のもと個人情報が特定できないよう修正を加えた金額。
*2 70歳未満のサラリーマンを想定。(組合管掌健康保険または協会けんぽの医療保険制度を利用)
*3 年収約370~770万円の方を想定。自己負担額の計算は、80,100円+((1)-267,000円)×1%。但し、自己負担額が80,100円以下の場合は窓口支払い額とした。
*4 (1)の保険診療の食事療養に係る費用のうち、厚生労働大臣が定める一般の方の1食あたりの標準負担額460円(平成30年4月以降)に対して、1日を3食として入院日数を乗じた金額。
*5 (2)の選定療養のうち、いわゆる差額ベッド代に係る費用。「主な選定療養に係る報告状況」厚生労働省 平成28年7月1日現在より1日あたり平均徴収額(推計)の合計値6,144円に入院日数を乗じた金額。
*6 付添いの家族の食事代や交通費,日用雑貨の購入費等の費用を1日あたり1,500円と仮定し、入院日数を乗じた金額。
睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、その治療法は大きく分けて2つあります。一つ目は、最もポピュラーな治療法である「CPAP(シーパップ)療法」。専用機器に接続したホースとマスクを通して、圧力をかけた空気を口内に送り込み、気道がふさがらないようにする治療法です。二つ目は、自分の歯型に合ったマウスピースを装着して、下あごを前にずらすことで、のどが閉塞するのを防ぐ治療法です。
CPAP療法に関しては、呼吸器科やスリープクリニック(睡眠障害専門クリニック)で専用の機器をレンタルするとともに、毎月1回、医師の診断を受けることが必要です。「1時間に10秒以上の呼吸停止が20回以上ある」場合に、健康保険の適用となり、自己負担が3割の人の場合は、「CPAP機器のレンタル料と診察費」で概ね毎月7,000円の治療費がかかります。
睡眠時無呼吸症候群の治療は、症状を抑える対処療法のため、CPAP治療を毎日しなくては効果が薄れます。そのため一旦治療を開始すれば、継続的に機器のレンタル料と診察費が発生します。単純計算で1年間に8.4万円(月7,000円×12か月)、5年間で42万円(年8.4万円×5年)の治療費がかかると考えれば良いでしょう。決して少ない出費ではありません。
一方、軽度の睡眠時無呼吸症候群の患者に対しては、マウスピース治療が選択される場合があります。その場合は、主に歯科医院で自分の歯型にあったマウスピースを作成もらう費用がかかります。健康保険が適用になる場合もあり、3割の自己負担で約2万円となっているようです。この治療法では、医師の元に毎月通う決まりはありません。
ところで睡眠時無呼吸症候群と確定診断される前には、検査で睡眠中の無呼吸・低呼吸がどの程度あるかが調べられます。睡眠時無呼吸症候群の検査は、治療する場合と同じく、呼吸器科やスリープクリニックなどで実施できます。携帯型の機器を自宅に持ち帰って指に装着し、呼吸状態や血液中の酸素濃度、脈拍数、無呼吸・低呼吸の回数などを測定する「簡易検査」は、約3,000円(3割負担)の費用負担となります。
さらにこの簡易検査の結果、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあれば、確定診断するために医療機関に1泊入院して脳波や眼球運動を調べる「終夜睡眠ポリソムノグラフィー(PSG)検査」が行われます。費用は3割負担の場合で、約5万円です。PSG検査の費用は保険診療のため、どの病院でも差はありません。ただ入院の際の個室代(差額ベット代)が病院によって大きく異なります。
睡眠時無呼吸症候群の人はいびきをかくことが多く、他の入院患者への配慮から個室に入院して検査をするのが一般的です。
治療費に関しては、監修医の診療経験に基づく平均的な金額を記載しております。患者の病状や受診される診療機関、治療方法などによって費用は異なります。あくまでも治療費の目安として情報を提供するものです。
病気データ
睡眠時無呼吸症候群のデータ
睡眠中に呼吸停止を繰り返す睡眠時無呼吸症候群。いったいどのぐらいの人がこの病気にかかっているのでしょうか。
厚生労働省の「令和2(2020)年患者調査」によると、睡眠時無呼吸の総患者数は61.3万人となっています。患者数は平成14(2002)年の調査では2.3万人でしたが、調査ごとにその数は増えています。
性別でみると、男性のほうが睡眠時無呼吸症になりやすい傾向にあり、男性発症率は女性の約2〜3倍と言われています。男女差がある理由の一つは体型の違いです。女性は太ると下半身に脂肪がつきやすいのですが、男性は上半身に脂肪がつきやすく、顎や喉へ脂肪が蓄積しやすい傾向にあります。ただ女性は、閉経後にホルモンの分泌量が大きく低下し、男性と同じように発症率が高まる傾向にあり、睡眠時無呼吸症候群のひとつ「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」の中等症以上の患者は閉経後女性の10%に及ぶと考えられています。
その要因のひとつは、閉経前には女性ホルモンがのどの筋肉に作用して、気道が狭くなるのを防ぐ効果がありますが、閉経後にはその効果が薄れるからです。
このほか、顎(あご)が小さく気道が塞がりやすい人に発症することがあります。
厚生労働省が毎年発表している「社会医療診療行為別統計」で、睡眠時無呼吸症候群の治療で用いられる「CPAP療法」に関して診療が行われた回数を年齢別でみてみると、45歳から75歳までが多くなっていることから、患者数もその年齢層に多いことがうかがえます。
出典
厚生労働省「令和2年患者調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/20/dl/kanjya.pdf
厚生労働省 「令和3年社会医療診療行為別統計」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/sinryo/tyosa21/
一般社団法人日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
https://www.jrs.or.jp/publication/jrs_guidelines/20200730145402.html
治療費の監修
大河内 昌弘
プロフィール
平成2年3月名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立大学病院、愛知県公立尾陽病院で内科医として勤務した後、アメリカルイジアナ州立大学生理学教室に留学。
その後、厚生連尾西病院内分泌代謝科部長、名古屋市立大学消化器代謝内科学 臨床准教授を経て、平成24年10月におおこうち内科クリニック開業。
日本内科学会専門医、日本糖尿病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医、日本消化器病学会専門医、平成15年学位取得。
目次
よくある質問
「睡眠時無呼吸症候群(SAS)と保険」に関する相談例
持病や既往症がある方向けの保険商品をご案内しているニッセンライフのカスタマーコンタクトセンターには、睡眠時無呼吸症候群の方からのご相談が数多くあります。
主な質問とその回答例をご紹介します。
睡眠時無呼吸症候群の治療で、CPAP療法を1年前から続けています。経過は良好で無呼吸の症状は抑えられていますが、今後、ほかの病気になることが怖いので、医療保険または終身保険に入りたいと思っています。加入できる保険はありますでしょうか。
回答はこちら
現在、持病で治療中の方は健康な方に比べ通常の医療保険や死亡保険(終身・定期保険など)へのご加入がむずかしくなります。
ただし、持病・既往症がある人向けの「引受基準緩和型」の医療保険や死亡保険にご加入いただける場合があります。(1)過去3ヶ月以内に医師から入院・手術をすすめられた (2)過去1年(2年)以内に、入院・手術を受けた (3)過去5年以内にがんや肝硬変と診断された―など、3~5項目の簡単な告知項目にすべて「いいえ」であればお申し込みいただけます。
長距離トラックの運転手です。会社からの指導で睡眠時無呼吸症候群の簡易検査を受けたところ、結果があまり良くなく、病院での精密検査を受けるように言われました。万が一、無呼吸症候群になっている場合に備えて、医療保険に加入しておきたいのですが…。
回答はこちら
申しわけありません。睡眠時無呼吸症候群など病気の可能性を指摘されている方は、医療保険には加入いただけない可能性が高いです。
ただし、精密検査の結果次第では、通常の医療保険または持病・既往症がある人向けの「引受基準緩和型医療保険」をご案内できる可能性がありますので、検査結果が判明してから改めてご連絡下さい。
3年前に睡眠時無呼吸症候群との確定診断を受けて、CPAP療法を続けています。持病で治療中の場合は、通常の医療保険や死亡保険への加入が難しいと聞きました。いったん治療を中断して、保険に加入してから治療を再開しようと思いますが、そんなことは可能でしょうか。
回答はこちら
いったん発症した持病の治療を中断したからと言って、持病が完治したわけではありません。そのため、CPAP療法をストップしても通常の医療保険や死亡保険には加入いただけない可能性が高いです。
持病や既往症がある方には、引受基準緩和型の医療保険や終身保険をご案内しています。こちらの商品をご検討下さい。
いびきが酷いとの妻からの指摘を受けて睡眠時無呼吸症候群の検査を受けたところ、軽度の睡眠時無呼吸症候群との診断を受けました。自覚症状などは全くなく、病気一つすることなく毎日健康で過ごしているのですが、なぜ通常の保険には入りにくくなるのでしょうか。
回答はこちら
無呼吸症候群は睡眠中に、気道が閉塞して一時的に呼吸が止まる怖い病気です。
治療をしないと、生活習慣病や不眠症、うつ病などさまざまな疾病を発症する可能性が高くなることが分かっています。ですので、現在症状がなくても適切な治療を受けなくてはなりません。保険への加入をご希望の場合は、持病や既往症がある方向けの引受基準緩和型の保険をご検討ください。
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