病気解説
胃がんとは
胃は食道に続く臓器です。胃がんは胃の壁の最も内側にある粘膜内の細胞が、何らかの原因でがん細胞になって無秩序に増殖を繰り返すがんです。
胃がんは、初期の段階で発見されれば、内視鏡的粘膜剥離術(ESD)など内視鏡的手術で病変部をとることで、根治が期待できます。
しかし、胃はとても大きな臓器であり、がんが進行しても症状が出ない場合も少なくありません。
その一方で、胃がんは早い段階から腹部の痛みや膨満感、胸焼け、食欲不振などの症状が出るケースもありますが、これらは胃炎や胃潰瘍など胃の慢性疾患の症状とよく似ているため、なかなか区別しにくいのが普通です。
胃がんはがん細胞が増殖をくり返し、何年もかかって胃の中に徐々に入り込んでいきます。そのため、検診を受けないでいると、発見したときには進行した胃がんで治療が困難になっているケースもあります。
胃がんの中でも特に進行が速いのが「スキルス胃がん」です。このタイプの胃がんは、がん細胞が胃の粘膜の表面には現れず、胃壁に沿って急速に広がっていくもので、発見された時にはすでに腹膜内に転移しているケースが高くなっています。
胃がんの原因は、様々な研究がおこなわれており、その中でも生活習慣や、ヘリコバクターーピロリ菌の感染などがリスクを高めると考えられています。食生活については、塩分の多い食事や野菜や果物の摂取不足が指摘されています。
ヘリコバクターピロリ菌(いわゆるピロリ菌)は中高年で感染率が高い傾向があります。ヘリコバクターピロリ菌に感染しているかは「ヘリコバクターピロリ抗体検査」という血液検査で調べることができます。ただ、胃がんになっているまでは分からないので、X線検査や内視鏡検査を別に受ける必要はあります。ヘリコバクターピロリ菌に感染した人全員が胃がんになる、というわけではありませんが、除菌療法が胃がんのリスクを低くするという研究結果もあります。
胃がんが疑われる場合は、「胃X線検査」や「内視鏡検査」で病変の有無や場所を調べます。内視鏡検査は、ファイバースコープ(胃カメラ)で胃の内部を直接見ることができるため、組織の一部を採取して、病理検査でがんの確定診断を行うことが可能です。
胃がんの進達度(胃壁のどれぐらいの深さまでがん細胞が進行しているか)や他の臓器やリンパ節への転移などを調べるには、「超音波検査(エコー検査)」や「CT検査」などが有効です。
保険加入
胃がんにそなえる保険選び
胃がんは長い間、日本人のがんによる死亡者数では第1位でしたが、現在は肺がん、大腸がんに続く第3位となっています。しかし、罹患者数で見ると、がん患者の約5人に1人を占めるなど、かなり多くなっています。男女別に見ても、男性のがん患者に占める「胃がん」の割合は1位、女性のそれは3位となっています。
しかし、胃がんは罹患率に比べると、死亡率は低くなっています。これは、X線検査や内視鏡検査の普及で、早期がんのうちに発見されるケースが増えているからです。
そのため、ニッセンライフでは通常の保険よりも加入条件の基準(引受基準)が緩く、告知項目が簡素化された「引受基準緩和型保険」または告知が不要な「無選択型保険」をご案内しています。
引受基準緩和型保険は、通常の保険より、申し込みをする際に必要な告知項目の数が少なく、内容も簡素化されているため、持病や既往症がある方でも申し込みができる保険です。
胃がんにかかったことがある方でも、治療を終えてから5年間、再発・転移がなく完治しており、上記の質問にすべて「いいえ」であれば申し込みができます。
通常の保険よりも保険料が割増しになるなどの条件がありますが、持病に対する保障はもちろん、持病以外の病気やケガも保障の対象となっています。
引受基準緩和型医療保険への加入が難しい方には、無選択型保険もあります。
無選択型保険とは、健康上の理由で保険に加入できなかった方でも無審査・無告知で誰でも入れる保険のことです。誰でも加入できる分、保険料が高く、保障内容に制限があり、加入を検討するときには注意しなければいけません。そして保険種類によっては年齢や職業、加入限度額によっては加入できない場合もあります。
無選択型保険に加入したあとでも、健康状態がよく引受基準緩和型の告知項目に該当しなければ、再度検討する事も可能です。
ニッセンライフでは、治療状況や健康状態をうかがったうえで、複数の保険会社の中からご加入いただける可能性の高い保険商品をご案内しています。ぜひ、ご相談下さい。
治療法
胃がんの治療法
胃がんの治療は、「IA期」~IV期」の8段階ある病期(ステージ)によって、標準的な治療法が決まっています。胃がんにおける中心的な治療法は、(1)手術(外科治療)(2)内視鏡治療(3)抗がん剤治療(化学療法)-の3つで、これらが単独かまたは組み合わせておこなわれます。
病期 | 治療法 | 特徴 |
---|---|---|
IA期 | 手術 胃の部分切除 | リンパ節の転移がない早期のがんであるため、病変部を切除する方法が主流。 入院日数が短いうえに、胃全体を取りのぞかないため、体の負担が少ない。 ⅠA期であっても胃の粘膜仮想に転移している場合は開腹手術になる。 |
II~III期 | 手術 胃とリンパ節の 切除 | 進行したがんでは、胃の切除と同時に周辺のリンパ節切除をおこなう。 胃の切除の範囲は、がんのある場所や進行度によって異なり、その状況に応じて最適な手術の方法が選択される。 |
IV期 | 化学療法 (抗がん剤) | 遠隔転移をしており、がんをすべて取りのぞく「根治手術」は難しいため、化学療法が中心の治療になる。 病状によっては胃がんだけを切除する「減量手術」をおこなったり、がんからの出血や狭窄のために食事が十分にとれないときは、病変がある胃を切除したり、食物の通り道をつくるバイパス手術がおこなわれる場合もあります。 |
胃がんの切除手術の前後には、治療効果を高めるために抗がん剤治療(化学療法)がおこなわれる場合もあります。また、手術後に再発予防の目的で、抗がん剤がもちいられるのが「術後補助化学療法」です。
抗がん剤はがん細胞だけでなく、正常な細胞にも影響を与えます。副作用の少ない新しい薬剤が出てきているとはいえ、髪の毛が抜けたり、口内炎や下痢などの副作用に悩まされるケースも少なくありません。抗がん剤の副作用によってQOL(生活の質)が低下する場合もあるため、医師や専門家の適切な指導を受けながら治療を続ける必要があります。
がんによる痛みや精神的な苦痛を取り除くことを狙いに、「緩和ケア」を受けられる病院も増えてきました。がん患者だけでなくその家族も対象になっており、2012年に見直された国の「がん対策推進基本計画」の重点課題にも、「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が盛り込まれ、この動きを後押ししています。
治療費
胃がんの治療費用
2018年に某病院にて胃がんを治療した50歳男性の治療費実例にもとづき、患者さんが負担しなくてはならない費用の概算を計算しました。
医療にかかる費用 | |
---|---|
①健康保険適用医療費総額 (保険診療分) | 700,000円*1 |
②評価療養・選定療養等の総額(保険外診療分) | 0円*1 |
③医療費総額(①+②) | 700,000円 |
④窓口支払額(3割負担の場合*2①×30%) | 210,000円 |
⑤高額療養費の自己負担限度額*3 | 84,430円 |
⑥高額療養費による割戻額(④-⑤) | 125,570円 |
⑦医療費自己負担額(②+⑤) | 84,430円 |
その他の自己負担費用の概算 | |
⑧入院時食事療養費標準負担額*4 (1食460円×入院日数×3回) | 9,660円 |
⑨差額ベッド代 (1日6,144円×入院日数)*5 | 43,008円 |
⑩雑費(1日1,500円×入院日数)*6 | 10,500円 |
⑪合計自己負担額(⑦+⑧+⑨+⑩) | 147,598円 |
*1①②の治療費は、実在する患者の診療明細から監修医の判断のもと個人情報が特定できないよう修正を加えた金額。
*2 70歳未満のサラリーマンを想定。(組合管掌健康保険または協会けんぽの医療保険制度を利用)
*3 年収約370~770万円の方を想定。自己負担額の計算は、80,100円+((1)-267,000円)×1%。但し、自己負担額が80,100円以下の場合は窓口支払い額とした。
*4 (1)の保険診療の食事療養に係る費用のうち、厚生労働大臣が定める一般の方の1食あたりの標準負担額460円(平成30年4月以降)に対して、1日を3食として入院日数を乗じた金額。
*5 (2)の選定療養のうち、いわゆる差額ベッド代に係る費用。「主な選定療養に係る報告状況」厚生労働省 平成28年7月1日現在より1日あたり平均徴収額(推計)の合計値6,144円に入院日数を乗じた金額。
*6 付添いの家族の食事代や交通費,日用雑貨の購入費等の費用を1日あたり1,500円と仮定し、入院日数を乗じた金額。
治療内容によってかかる費用に大きな違い
胃がんの治療法は年々進化しており、内視鏡治療、放射線治療、先進医療、化学療法などさまざまで、どんな治療を受けるかによって治療費も大きく変わってきます。
「思っていたよりもお金がかからなかった」
「毎月の支払いが大変で、こんなに治療費用がかかると思わなかった」
がん治療経験者に話を聞くと、こんな両極端な答えが返ってくることがありますが、実はどちらも正直な感想です。
がんは入院・手術に加えて、放射線・抗がん剤・化学(薬物)療法など、さまざまな治療法を組み合わせる集学的治療が行われます。治療が長期に及んだり、再発・転移したりすることもあり、治療費は高額になることもあります。しかし、早期のがんであれば手術によって完治することもあり、その場合の治療費の負担は比較的小さくすみます。たとえば、内視鏡的粘膜下層剥離術の治療で、入院7日の場合、医療費合計は概算で70万円位です。公的医療保険と後述の「高額療養費制度」を活用すれば、支払う医療費は10万円以下で済む場合もあります。(食事代、差額ベッド費用、交通費などを含めると概算15万円程度となります)
がん治療は局所治療(手術や放射線治療)や全身治療(抗がん剤使用)に分かれますが、保険診療と自由診療、さらに高度の医療技術を用いた先進医療とにも分けられます。健康保険を使わない自由診療となれば、治療費はかなり高額になります。
がん治療には、大きく分けて健康保険を使用できる治療(手術・化学治療・放射線治療)と自由診療(温熱療法・免疫療法・免疫療法・漢方・ビタミンC療法)があり、もっと高度な治療が先進医療です。 先進医療は自由診療扱いですが、通常診療と同じ部分の診察・検査・投薬・入院料などは、健康保険対象となります。
その他に、病院までの交通費、入院時の日用品や寝衣代、個室の場合は差額ベッド代、診断書など証明書の作成代などの費用がかかります。
がん治療には「高額療養費制度」の活用を忘れずに
がん治療にかかる治療費の負担を減らすために「高額療養費制度」の活用をおすすめします。この制度は、1か月に支払った治療費が一定額を超えた場合に、超えた分の金額を返還してくれる制度のことで、その一定額(自己負担上限金額)は、年齢や所得によって変わります。たとえば、健保組合加入の70歳未満の年収約370~約770万円の方(標準報酬月額28万円以上50万円未満)は、1か月の治療費の自己負担額が8万100円に(総医療費-267,000円)×1%を加算した額を超えると、超えた分が返還の対象となります。
たとえば、胃がんの1か月の総治療費が50万円で、自己負担額が3割の15万円だった場合、自己負担の上限額を超えた7万円弱が支給されるのです。
高額療養費制度については、事前に健保組合など加入している公的保険の窓口で「限度額適用認定証」をもらっておくことで、医療機関での治療費の支払いは、その自己負担額の上限(上記の例だと8万100円程度)だけになります。
ただしこの制度には〝盲点〟があり、月の「初日から末日までの」1か月ごとに対象となる期間がリセットされます。たとえば1月15日から胃がんの治療が始まり、2月15日までの1か月間で限度額を超えても、この制度の算定対象期間1月31日までと2月15日までに分かれるため、1月中の治療費が約8万円を超えていなければ、高額療養費制度は適用にはなりません。
また、公的医療保険が適用されない治療費(未承認の抗がん剤や差額ベッド代など)はこの制度の対象外となっています。
実は、がんにかかるお金で意外と負担が大きいのが、治療費以外にかかる費用です。2011年にニッセンライフとがん患者団体支援機構が共同で実施した「第3回・がん患者アンケート」によると、がん治療費以外の支出として(1)交通費・宿泊費(平均23.2万円)(2)健康食品・サプリメント(同15.3万円)(3)保険適用外の漢方薬(同12.2万円)(4)ウィッグ・かつら(同19.3万円)という結果が出ました。総額では1人あたり平均50万円以上の治療費以外の「自己負担」があることが明らかになっています。
セカンドオピニオンも活用しましょう
胃がんは診断が確定し、治療方針が決定してからでないと治療費がどのぐらいになるかが見えてきません。そのため、治療方針を聞くのと同時に、治療費についてもしっかりと医師に確認しておいた方がいいでしょう。がん治療は長期におよぶことが多いため、1~2年単位で必要な費用を把握しておくことも欠かせません。
また主治医の診断や治療方針について、別の医師の意見を聞きたいと思った場合は、セカンドオピニオンを活用しましょう。ここでのポイントは、主治医とは異なる背景の医師を探すことです。医師によっては手術をすすめる場合もあれば、放射線治療をすすめる場合もあります。複数の意見を聞いた上で、最後は自分で納得して結論を出すことが大切です。
*「胃がんの治療費」の目安については、部位や進行度に合わせて治療費が簡単に試算できるWebサイト「がん治療費.com」(http://www.ganchiryohi.com/)がわかりやすくて便利です。
治療費に関しては、監修医の診療経験に基づく平均的な金額を記載しております。患者の病状や受診される診療機関、治療方法などによって費用は異なります。あくまでも治療費の目安として情報を提供するものです。
監修
佐藤 典宏
産業医科大学 第1外科 講師
プロフィール
医学博士、日本外科学会指導医・専門医、がん治療認定医。消化器がんに対する外科治療のかたわら、膵臓がんの基礎研究にも従事しています。がん患者さんに役に立つ情報を提供すべくブログを開設「あきらめない!がんが自然に治る生き方(https://satonorihiro.xyz/)」。著書に『ガンとわかったら読む本』(マキノ出版)。
病気データ
胃がんのデータ
厚生労働省の調査によると、1996年では30.5万人だった胃がんの総患者数は、2017年には19.6万人になっており、減少傾向にあることがわかっています。減少の要因として、ヘリコバクターピロリ菌の感染率の低下が考えられています。
また、年齢・性別ごとにみると、ほかのがんと同じように60代ごろに患者数が増える傾向があり、ほとんどの年代において女性よりも男性の罹患者数が多くなっています。胃がんの原因にはヘリコバクターピロリ菌以外に、生活習慣が影響していることがわかっており、その中でも食生活の乱れと喫煙が胃がんのリスクを高めます。
全世界の中でも日本はトップクラスで食塩の摂取量が多い傾向があります。
食塩摂取目標は1日5グラムを世界基準としていますが、厚生労働省は18歳以上の日本人の1日の食塩摂取目標を男性で8.0グラム未満、女性で7.0グラム未満としています。これは生活習慣病の一種の高血圧や心疾患を予防する効果があります。
2017年時点での食塩摂取量は男性で10.8グラム、女性で9.1グラムとなっており、食塩摂取目標よりも多くなっています。
また、喫煙もがん全体のリスクを高める要因の一つです。2017年時点で平均習慣的に喫煙をしている人の割合は、男性で29.4%、女性で7.2%となっています。
食塩摂取量も喫煙率も男性の方が高いことから、胃がん罹患率の高さに影響していることがわかります。
胃がんを予防するためにも、バランスの良い食事と禁煙をおこなうことが重要です。
目次
よくある質問
胃がんと保険に関する相談例
持病や既往症がある方向けの保険商品をご案内しているニッセンライフのカスタマーコンタクトセンターには、胃がんと、診断を受けた方からのご相談が数多くあります。
主な質問とその回答例をご紹介します。
過去に初期の胃がんと診断され、内視鏡治療でがん細胞を切除したことがあります。治療後は定期的に通院し、検査していますが、再発などはありません。ただ、今後のがんの再発やほかの病気になったときへのそなえとして、医療保険かがん保険に加入したいと思っています。
回答はこちら
持病・既往症のある方向けに「引受基準緩和型」の医療保険やがん保険をご用意しています。
過去にがんになった方は、通常の医療保険やがん保険への加入は難しいですが、持病・既往症のある方向けに「引受基準緩和型」の医療保険やがん保険をご用意しています。
引受基準緩和型
医療保険の場合は、「過去2年以内に入院・手術・放射線治療を受けていない」など告知項目は保険会社によっても異なります。ぜひ複数の保険商品を比較してご検討ください。
1年前に早期胃がんで入院・手術を受けました。その半年後に実施した検査ではまったく異常がありませんでした。完治したと思うので、通常の医療保険に申し込みたいのですが・・・。
回答はこちら
申し訳ありません。一度がんを発症した方は、再発の恐れがあるため、通常の医療保険への加入は難しくなります。
申し訳ありません。一度がんを発症した方は、再発の恐れがあるため、通常の医療保険への加入は難しくなります。ただ、「過去5年間にがんでの入院・手術(または診察・検査・治療・投薬)がない」など、再発の可能性が低いと判断できれば、持病・既往症のある方向けの「引受基準緩和型医療保険」にお申し込みいただけます。
告知項目は保険会社によっても異なります。ぜひ複数の保険商品を比較してご検討ください。
自治体の胃部のX線検査(バリウム検査)で、胃がんの疑いがあるということで、医療機関で胃カメラによる検査を受けることになりました。万が一、がんだったらと思うと不安で眠れません。せめて保険にだけでも入っておきたいのですが、可能でしょうか。
回答はこちら
精密検査の結果次第では、医療保険やがん保険をご案内できる場合もありますので、検査結果が出てから、再度ニッセンライフにお問い合わせください。
申しわけありませんが、検診でがんの疑いがあると判定された現時点では、医療保険やがん保険にお申し込みいただくことはできません。ただ、精密検査の結果次第では、医療保険やがん保険をご案内できる場合もありますので、検査結果が出てから、再度ニッセンライフのカスタマーコンタクトセンターにお問い合わせください。
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